ぶりだいこんブログ

推理小説とか乃木坂46の話をしています。

『TENGU』(柴田哲孝/2006)

行儀の悪い話だが、満員電車で目の前の人が本を読んでいると、なにを読んでいるのだろうとつい覗き込んでしまう。大抵はふーんと思うだけなのだけれども、10年以上前のある朝の満員電車で、ミステリと思われる小説の解決編を読んでいる人がいて、その数ペー…

『〈賄賂〉のある暮らし 市場経済化後のカザフスタン』(岡奈津子/2019)

カザフスタン、という国は自分にとってほとんどなじみがない。知っているのは、中央アジアにある比較的面積の大きな国だということくらいだ。 カザフスタンは旧ソ連の構成国である。ソ連崩壊後の1991年に「カザフスタン共和国」として独立した。その社会では…

『エレファントヘッド』(白井智之/2023)

アフリカゾウは脳内に百十億個のニューロンをもつことで、四千キロから七千キロの巨体を動かしている。人類はより小さなからだであるにも関わらず、アフリカゾウを上回る百十五億個のニューロンをもっているという。つまり、人類の脳にはまだ余力があるのだ―…

『破果』(ク・ビョンモ/2013)

65歳の女殺し屋を主人公にした異色の小説。仕事上のあるミスをきっかけとして、主人公爪角(チョガク)の周囲で不穏な事態が起こり始める。彼女は老いを自覚すると共に、殺し屋になった自身の半生を思い返すのだった―― 著者のク・ビョンモは1976年ソウル生ま…

『鵼の碑』(京極夏彦/2023)

人気推理小説「百鬼夜行(京極堂)シリーズ」の17年ぶりの最新作。昭和20年代の関東地方を舞台に、小説家の関口巽、探偵の榎木津礼二郎、刑事の木場修太郎、そして古本屋の京極堂こと中禅寺秋彦らおなじみの面々が、妖怪「鵼(ぬえ)」にまつわる怪事件へ巻…

『知能犯の時空トリック』(紫金陳/2012)

中国沿岸部の某市。恩義ある人物のため、物理教師が悪徳公務員たちを次々と死に追いやる。市公安局のエース捜査官が犯人探しの陣頭指揮を取るが、事件の裏には公務員たちによる数々の不正が潜んでいた―― 紫金陳は中国の推理作家。2007年にデビュー。2019年に…

『友が消えた夏~終わらない探偵物語~』(門前典之/2023)

志摩の岸壁に立つ洋館が焼け落ちた。内部から大学生グループの首を切られた死体が見つかった。解決済みと思われる事件だったが、被害者がボイスレコーダーへ残した記録を入手した探偵蜘蛛手は、隠された真相を推理する。一方、建設会社に勤める女性がタクシ…

『国際法』(大沼保昭/2018)

ロシアによるウクライナ侵攻に関連して「国際法」というキーワードを何度か聞いた。曰く、「原子力発電所への攻撃は国際法違反である」など。自分は国際法というものがよく分かっていない。そういう法律があるのか?(ないような気がするけどあるのか?) 国…

『密閉山脈』(森村誠一/1971)

登山仲間の二人の男が八ヶ岳で遭難していた美女を救助する。女は恋に破れ自殺を図って山を訪れていたが、命を救ってくれた男たちに惹かれていく。三人は北アルプスへの登山旅行を計画するが、山上で惨劇が訪れる―― 森村誠一は日本の小説家。1969年に『高層の…

『邪悪催眠師』(周浩暉/2013)

不可解な事件が起こった。ある者はでゾンビのように人へ噛みつき、またある者は鳩のようにビルから飛び立って死ぬ。やがてインターネットに流される予告。「私は世界一の催眠師であり、君たちの生死を操れる」。この邪悪な催眠術師に立ち向かうのは、龍州市…

『龍神池の小さな死体』(梶龍雄/1979)

工学部教授の仲城智一は死ぬ間際の母親から「弟・秀二は殺された」と告げられる。戦時中、小学生だった秀二が死んだのは疎開先である千葉の山村だった。調査に訪れた智一は「龍神池」にまつわる伝説を聞かされる―― 梶龍雄は日本の小説家。1977年に『透明な季…

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』(上)(下)(アンディ・ウィアー/2021)

マッド・デイモン主演で大ヒットした映画『オデッセイ』の原作『火星の人』の著者であるアンディ・ウィアーの最新作。本作『プロジェクト・ヘイル・メアリー』も既にライアン・ゴズリング主演で映画化が予定されている。 プロジェクト・ヘイル・メアリー 上 …

『ミステリと言う勿れ』(9)(10)と多重誘拐ミステリ

ミステリと言う勿れ(10) (フラワーコミックスα) 作者:田村由美 小学館 Amazon 田村由美のミステリーマンガ『ミステリと言う勿れ』、菅田将暉主演で月9のドラマも始まったようですね。1クールの期間ではカバーされないと思いますが、原作最新の9~10巻は…

『悪童たち』(紫金陳/2014)

義理の両親を殺害した男。完全犯罪となるはずだった。現場を目撃していた子供たちがいた。子供たちは金のために男を脅迫する。男は子供たちを葬り去ろうとする―― 紫金陳は中国の推理作家。2019年に「謀殺官員(官僚謀殺)」シリーズの一作『知能犯之罠』が初…

『三体III 死神永生』(劉慈欣/2010)

中国発人気SF「三体」シリーズ三部作の完結編。前作『三体II 黒暗森林』で登場した「面壁計画」の裏で進行していた「階梯計画」。若き研究者程心は三体と階梯計画を巡る数奇な運命に巻き込まれていく。 三体Ⅲ 死神永生 上 作者:劉 慈欣 早川書房 Amazon ※ネ…

『カディスの赤い星』(上)(下)(逢坂剛/1986)

1975年、独立PRマンの主人公が楽器メーカーのPR案件をきっかけに、「カディスの赤い星」と呼ばれる伝説のギターと、スペインのフランコ総統暗殺を巡る陰謀へ巻き込まれていく。 逢坂剛は日本の作家。大手広告代理店博報堂勤務の傍ら、推理小説、冒険小説を多…

『理論疫学者・西浦博の挑戦 新型コロナからいのちを守れ!』(西浦博、川端裕人/2020)

2020年、世界的に大流行した新型コロナウイルス感染症COVID-19。厚生労働省の通称「クラスター対策班」中心メンバーとして従事、4月の緊急事態宣言時に「8割接触減」を提唱した理論疫学者西浦博に対するインタビュー。聞き手は小説家・ノンフィクション作家…

『人類と気候の10万年史』(中川毅/2017)

近年は地球温暖化が進行しており、日本でもゲリラ豪雨や強い台風が頻発するような異常気象が続いている、と漠然と認識していた。が、本書を読んで、むしろ現代は地球史上稀に見る安定した気候であり、また、むしろいつ氷河期に転落してもおかしくないのだと…

『死亡通知書 暗黒者』(周浩暉/2008)

復讐の女神「エウメニデス」を名乗る者から、罪を犯しながらも逃げおおせた人間たちへ「死亡通知書」が送られた。そして、その予告通りに殺人が行われていく。あるいは衆人環視の下、あるいは人知れず、不可能とも思われるような犯行を「エウメニデス」は次…

『長江文明の発見』(徐朝龍/1998)

マンガ『キングダム』(原泰久)で、楚、という国が登場する。「誰が至強か!? ドドンドドンドン 汗明!」の楚である。楚は春秋五覇、戦国七雄にも数えられる強国だが、殷、周、他中原諸国とは異なる来歴をもつとも言われている。その辺りを詳しく知りたいと…

『わたしの名は赤』(上)(下)(オルハン・パムク/1998)

新型コロナウイルスがなければ今年はウィーンへ行こうと思っていた。日本からウィーンへは直行便もあるけれど、最近、途中降機(ストップオーバー)に関心があるので、イスタンブール経由のターキッシュエアラインでもよい、などと計画を練っていた。ウィー…

『沸騰インド 超大国をめざす巨象と日本』(貫洞欣寛/2018)

仕事でインドに少しだけ関わるかもしれないのだけれども、考えてみたら自分はインドのことなんて映画『バーフバリ』くらいしか知らないなと思い、本書『沸騰インド 超大国をめざす巨象と日本』を手に取ってみた。入門的に現代インド社会を知ることがでてきて…

『知能犯之罠』(紫金陳/2014)

アメリカ帰りの秀才徐策は、中国の地方都市で防犯カメラ網を掻い潜り次々と官僚たちを殺害していく。この難事件に挑むのは類まれな捜査力をもつエリート警察官高棟。奇しくも二人は大学時代の友人同士だった―― 紫金陳は中国の推理作家。2007年にデビュー。「…

『バロックの光と闇』(高階秀爾/2001)

西洋絵画では初期フランドル派からバロック付近が好きで、この辺りにもう少し踏み込んで見識を得たいと思い、丸の内オアゾの丸善などを覗いてみたけれど、バロック以外の時代――ルネッサンスや印象派について書籍や、もしくはフェルメールやベラスケスといっ…

『三体』(劉慈欣/2008)

中国でシリーズ発行部数2100万部に達し、2014年に出版された英訳版がヒューゴー賞を受賞したSF長編小説。翻訳は光吉さくら、ワン・チャイ、大森望の3名。 三体 作者: 劉慈欣 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2019/07/04 メディア: Kindle版 この商品を含…

『ザ・会社改造--340人からグローバル1万人企業へ』(三枝匡/2016)

ファクトリーオートメーション、金型部品の国内専門商社だったミスミがグローバル企業へと転身していくさまを、実際に指揮を執った経営者の視点で描いた書籍。 著者の三枝匡は外資系コンサルタント、事業再生請負を経て、2002から2014年までの12年間、ミスミ…

『あの子はもういない』(イ・ドゥオン/2016)

ユン・ソンイの妹で高校生のチャンイが姿を消した。チャンイは同級生ソ・ユンジェの死との関連が疑われ、警察が行方を捜している。ソンイは離れて暮らしていた妹の家を訪れるが、そこでチャンイが異常な生活を送っていたことを知る―― 著者のイ・ドゥオン(이…

『元年春之祭』の実写キャスティング考

『元年春之祭』(陸秋槎)は古代中国が舞台で漢籍の引用も多く、なかなかビジュアル的な想起がしづらい作品ではあるのだが、メインとなる三人の少女の掛け合いのくだりに至り、この三人を実写キャスティングでイメージすると捗るのではないかと思った(えー…

『元年春之祭』(陸秋槎/2017)

古代中国、前漢の旧楚の地域を舞台に、祭祀を担う一族が次々と殺害されていく。現場は衆人環視の密室。長安より客人として招かれていた豪族の娘於陵葵(おりょうき)は、一族の娘観露申(かんろしん)と共に、四書五経の知識を駆使して謎に挑む。 著者の陸秋…

『ゲームの達人』の「超訳」と原文の比較

シドニィ・シェルダンの諸作は、日本ではアカデミー出版より翻訳されており、アカデミー出版はこれを「超訳」と名付けている。 「超訳」は、自然な日本語を目指して進める新しい考えの翻訳で、アカデミー出版の登録商標です。 「超訳」をひと言で説明するな…