ぶりだいこんブログ

推理小説とか乃木坂46の話をしています。

『三体III 死神永生』(劉慈欣/2010)

 中国発人気SF「三体」シリーズ三部作の完結編。前作『三体II 黒暗森林』で登場した「面壁計画」の裏で進行していた「階梯計画」。若き研究者程心は三体と階梯計画を巡る数奇な運命に巻き込まれていく。

  ※ネタバレしています。

 難病に冒された雲天明はひょんなことから大金を得たが、学生時代の思い人である程心に「星」をプレゼントするだけで、法制化された安楽死を選ぶ。それを直前でとめたのは程心だった。程心は惑星防衛理事会戦略情報局、通称PIAへ勤務し、長官トマス・ウェイドの下、人類を三体艦隊へ送り込む「階梯計画」に従事していた。現有の技術力で送り込めるのは人類の脳だけ。雲天明献体に快諾し、彼の脳は宇宙へ射出された。程心は未来で見届けるために冬眠に就く。
 未来の人類は暗黒森林理論によって三体文明との融和に成功した。冬眠から目覚めた程心は、大衆からの圧倒的支持を得て、抑止装置発動の権限をもつ〈執剣者〉の地位を羅輯から継承した。それこそ三体文明の待ち望んでいた瞬間だった――

 前作で地球へ接近した三体文明が人類と一時的な和平を結び、いよいよ三体人のビジュアルが明らかになるのかと個人的にわくわくしていた。高度な科学文明を築き上げている一方、乱紀に体の水分を抜いて耐え忍ぶ知的生命体のビジュアル、興味あったじゃないですか。でも、全然そういう話ではなかった。まあ、そうするとまんま『幼年期の終わり』になってしまうので、著者が避けた理由も分からんでない。
「三体」シリーズの魅力といったら調子に乗った人類が三体文明にボコボコにされるところ。『黒暗森林』では下巻でボコボコにされるところ、本作では上巻からボコボコにされるので最高です。下巻では人類が超文明によってもっとボコボコにされます。

 生存の障害となるのは弱さや無知ではない。傲慢こそが生存の障害となる。

 一方、中盤の雲天明のおとぎ話とか、あとは最序盤のコンスタンティノープルの陥落の話とか、ん? と思うパートもなくはない。
 三部作を通して読むと、個人的には一作目が一番好きかな。もちろん、二作目『黒暗森林』のこれぞSFというべき科学的アイディアのつるべ撃ちも素晴らしいし、本作『死神永生』の宇宙の秘密に迫る感じもやはりSFらしい(今の宇宙が三次元なのは戦争によってどんどん次元が減少している過程で、むしろこのあともっと減っていくとか)。しかし、「そもそもタイトルの〈三体〉ってなんだ……?」のファーストインプレッションからからSFサスペンスで幕を開ける一作目が最も琴線に触れたのである。

 

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