ぶりだいこんブログ

推理小説とか乃木坂46の話をしています。

『赤い糸 輪廻のひみつ』(九把刀/2021)

 台湾映画『あの頃、君を追いかけた』(2011)の監督九把刀(ギデンズ・コー)の最新作。
 ある日雷に打たれて死んだ石考綸は、再び人間として転生するため、恋愛を司る神「月下老人」となり、おなじく不慮の死を遂げた女性ピンキーとペアを組んで、人々の縁結びを手助けすることになる。そして、死んだ時に記憶を失った石考綸は生前を思い出そうとするが――
 主人公石考綸を演じるのは、『あの頃、君を追いかけた』でも主演を務めた柯震東。ダブルヒロインのピンキー、小咪を演じるのはそれぞれ王淨、宋芸樺。

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 韓国映画『神と共に』を100倍くらいロマンティックにしたような話で、『あの頃、君を追いかけた』もそうだけど、この監督、ロマンティスト過ぎるだろう……

 ※ネタバレしています。

 死んだ人間は、生前に積んだ善行の数により転生先の生き物が変わる。バスケットボールの最中、雷に打たれて死んだ石考綸が転生できるのはかたつむりだった。恋愛を司る神「月下老人」(月老)になり、赤い糸を使って人と人を結び付けることができれば、善行の数が増やせるという。他の死者たちと共に月老を目指すことにした石考綸は、おなじく落ちこぼれの女性ピンキーと共に、辛くも月老の試験に合格する。
 月老となった石考綸とピンキーは次々と恋愛を成就させていく。そんな中、石考綸は犬の阿魯とその飼い主の小咪に出会い、生前の記憶を取り戻す。石考綸は小学生の頃、小咪に一目惚れし、それ以来10年以上の彼女にプロポーズを続けていたのだった。意地っ張りな小咪は、始めは石考綸と距離を置いていたが、次第にその人柄に惹かれ、大学生になって付き合うようになった。その矢先、石考綸が事故死したのだった。月下老人たちは小咪へ新しい縁をもたらそうと試みるが、どんな相手と赤い糸をつなごうとしても、糸はすぐに綻んでしまう。1万本の赤い糸を試しても、あの五月天の阿信とつなごうとしても、だめなのだ。
 一方、あの世で閉じこめられていた鬼頭成が怨霊となって現世に現れる。彼は500年前に自分を謀殺した人間たちを転生先まで追ってきたのだった――

 死んだ人間があの世の使いとなって人助けをするさまをコミカルに描きつつ、怨霊とバトルをして……という見た目は『神と共に』を思い起こさせる。が、本作はそれを甘々なストーリーに振り切ったような感じだ。小学生の頃から一途に小咪を思う石考綸とか、そんな彼にツンデレな態度を取りつついなくなると途端に打ちひしがれてしまう小咪とか、そもそも二人は前世からの恋人同士だったとか、観ていて少し恥ずかしくなるような展開を、まったくてらいなくスクリーンに映してみせる。
 では甘々なだけの映画かというとそういうわけでもなく、月老としての活動をBABY METALの楽曲に載せてポップに描く場面とか、地下井戸に閉じこめられた石考綸とピンキーをなぜだか貞子と俊雄が応援する場面とか、犬が可愛いとか、とにかく監督のやりたいことを全部詰め込んだような感じで、スクリーンが常にエネルギッシュだなと思った。スタッフロールにもキャストやスタッフがペットと映る写真が流れ、サービス精神旺盛というか、犬愛がすごい(ペット飼ってないと製作に参加できないのかとすら思う)。
 一方、バイクの排気筒とセックスする場面とか、小咪がトイレしようとすると便器の中から石考綸が顔を出す場面とか、ちょっと引くほどシモい場面があるのも、九把刀らしいというかなんというか……
 全体としてコッテコテなラブコメでありつつ、やりたいこと全部乗せで、エネルギッシュな映画だと思いました。

 

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