ぶりだいこんブログ

推理小説とか乃木坂46の話をしています。

マカオ香港旅行2026年(2)マカオ歴史地区、マカオ博物館、グランドリスボア

マカオ

 マカオは、中国大陸と陸続きのマカオ半島と、その沖合のタイパ島・コロアネ島・埋立地のコタイで構成されている。
 16世紀、ポルトガル人がマカオに住み着いたことから、その歴史が始まった。羽田正『興亡の世界史 東インド会社とアジアの海』によると、大航海時代、東アジアへ到達したポルトガル人は、マカオを領土として獲得したわけでなく、時の明政府へ地代を払うことでマカオを貿易拠点とすることが許された。彼らは日本が産出する銀と中国の生糸や陶磁器を交換する貿易に従事し、莫大な利益を得たという(マカオのポルトガル人はヨーロッパとアジアを結ぶ貿易をしていたわけでなく、あくまで東アジア域内貿易に参入しただけだった)。また、ポルトガル王の勅許を得たイエズス会もマカオを拠点とし、主に日本への布教を試みた。19世紀にポルトガルはマカオを清から正式に獲得した。
 その後、貿易港として衰退したマカオはカジノを主要産業として掲げた。また、ポルトガル人たちの建設した施設や広場などが「マカオ歴史地区」として世界遺産に登録されている。

南屏雅敘

 マカオ初ごはんは十月初五日街沿いの南屏雅敘へ。

 朝から地元の常連客で賑わう老舗店。

 南屏三文治(ハムたまサンド)と牛奶紅茶(ミルクティー)。ハムが厚切りジューシーで美味しい。本日はいい一日になりそうだ。

 マカオ、そこここの路地がリスボンを思わせる(そりゃ参考にしてるだろうからそうなんでしょうが)。

 小さな広場が点在しているところもリスボンっぽい。その広場にお堂があったりする。新鮮。

 ちなみに、この時点でかなり蒸し暑かった。

聖パウロ天主堂跡

 マカオのシンボル、聖パウロ天主堂跡。

 本来は絵になるであろう天主堂跡への大階段を、バスケの3on3の特設会場で塞いでいる。台無し。

 世界遺産の看板表記は英語、中国語、ポルトガル語、日本語。かつてのポルトガルの栄華と、かつての日本の栄華をしのばせる。

 9時ちょうどに門が開く。付属の天主教藝術博物館へ。キリスト教布教に関する遺物などが展示されているけれども、全体的に解説が乏しく、いまいち理解が深まらず。この絵画なども恐らく長崎の二十六聖人殉教を描いていると思われるが、その場では判然としなかった(あとで調べたら合ってるっぽかった)。前述の通りマカオは日本へ向かう宣教師を送り出した基地であり、日本のキリスト教徒弾圧を最も間近で見た存在だった。

 聖パウロ天主堂跡をあとにして聖アントニオ教会へ向かって歩く。

 が、日曜のミサで信者以外は入れなかった。それはそうだ。

 すぐそばのカモンイス公園へ。ルイス・デ・カモンイスはポルトガルで最も尊敬されている詩人ですね。その名を冠した公園。

 近所の人が運動や散歩をしている。朝の散歩コースが世界遺産なの、うらやましす。

 洪馨記椰子雪糕へ。大変有名なココナッツアイスのお店。

 イートインはなく、その辺りのベンチを探して、いただく。さっぱりしていて、蒸し暑さを和らげてくれる。

マカオ博物館

 マカオ博物館へ。訪れた日は入場無料だった。

 原田マハの小説『風神雷神』に、主人公が俵屋宗達の未発表史料を求めてマカオ博物館を訪れる場面がある。

 聖ポール天主堂のファサードをしばらく見上げてから、彩は隣接する「モンテの砦」の方面へと歩き始めた。「モンテの砦」と呼ばれる、かつて要塞だった小高い丘の中腹にマカオ博物館が建っている。こんもりと繁る木々が作る緑陰の中を進んでいくと、エスカレーターが現れる。これに乗れば博物館の正面にたどり着く。(『風神雷神』(上)より)

 博物館の展示は、マカオを東洋と西洋の交差点と定義し、東洋文明、西洋文明の概説から始めている。「漢字とは」とか「アルファベットとは」とか必要かな……と思ったけれど、これはこれであった方がよいのかも。
 それからポルトガル人がやって来て貿易港として発展。再現セットやジオラマがたくさんあり悪くないが、自分的にはもう少しまとまった流れがあるとよりよかったかも。

 マカオ博物館の三階からモンテの砦へ出られる。丘の上に砦を作るのリスボンっぽい。

 あと丘の上から向かいの丘が望めたりして、ポルトガル人にとってマカオはなじみやすい土地だったのかもしれない。

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RICO'S

 瘋堂中斜巷の急階段を下る。

 雀仔園にあるRICO'Sというマカオ料理レストランで昼食。

 こちらの名物はチキン一羽を使い、中にライスを詰めて揚げた料理。チキンの皮がぱりっとしていて美味。

 ホテルへ戻るのにバスへ乗車。マカオのバスは一律運賃で乗車時のみ支払。澳門通という交通系ICカードを持っていれば簡単。

 福榮里という昔の建屋が今も使われている通りを歩く。

グランドリスボア

 マカオといえばカジノ。カジノといえばグランドリスボア。
 対よろです!

 カジノへ行くのは生まれて初めて。カジノは撮影禁止のためここからしばらく写真がなくなります。

 意気揚々と地下へ降りるとスロットマシンや電子ルーレット、電子バカラなど機械のゲームばかりで、ゲーセンみたいな雰囲気。天下のグランドリスボアのカジノがこれだけ? 俺は人間のディーラーと勝負がしたいんじゃ。困惑しながら一階へ上がれば、打って変わって、広いフロアにディーラーのいる卓が無数。明らかに熱気が違う。
 事前にグランドリスボアの最低ベットは200香港ドル(だいたい4,000円くらい)という情報を見ていたのだが、500香港ドル(だいたい10,000円くらい)以上の卓しかない。ケチなので軍資金は1,000香港ドルのつもりであった。最低ベット500香港ドルだと最悪二回しかできないが、まあ、しかたあるまい。
 しかし、今度はチップの買い方が分からない。結論から言うと、賭ける賭けない関係なく卓でディーラーへ現金を渡しチップと交換するか、グランドリスボアでは「ケージ」と掲げられた交換所で交換する。
 余談だが、このチップ入手手順の不明さとか、最低ベットの高さとか、振りの客になかなかハードルが高い。もう少しこう初心者の館というか始まりの台地というかそういうのがあっても……と考えたりするが、カジノ運営会社にとってはVIP客が収益源であって、ルールも知らずに来てちまちま賭けるような観光客は取るに足らないということなのだろう。
 さて、自分はバカラというゲームをやろうと思っている。
 ルールは事前に勉強していて、卓の左右に裏返したトランプを2枚ずつ配り、客は右と左のどちらの合計値が9に近いかを賭ける。合計する際、10以上の数字のカード(つまり10、J、Q、K)はゼロ扱いになる。また、合計が10以上になった場合は10の位が切り捨てられる。例えば、配られたカードが「3」と「4」だったら合計値は単純に「7」だが、「5」と「J」だったら合計値は16でなくJをゼロとして「5」になる、「6」と「7」だったら合計値は13でなく10の位を切り捨てて「3」になる。合計値が低い場合は追加でもう1枚引き、3枚の合計値を使う。最初の2枚で合計値「9」が出せると「ナチュラル9」と呼ばれ勝利が即確定する。
 客は基本的に右か左かに賭けるだけでディーラーとの対決要素は特にない。カードは専用の機械から排出されるのでディーラーのカード技術的な要素もない。盛り上がるのは、左右それぞれ一番多くチップを賭けた客がカードをめくる権利を与えられることだ。これを「絞る」と呼ぶ。どうめくったところで配られたカードの数字が変わるわけでないのだが、客がちょっとずつめくることで場が大いに盛り上がるというわけだ。
 チップ入手後、しばらくバカラの卓を「見」に回り、概ねゲームの取り回しを把握する。一応、バカラの戦術として、連勝している客に乗っかる「順張り」と、負けている客と反対に賭ける「逆張り」があるらしい。運しかないゲームなので前に勝ったから次も勝つということは確率論的にほとんどないはずなんですが、麻雀でいう「流れ」みたいなやつでしょうか……
 既にフィーバーしている卓に途中から入って乱したくないし、誰もいない卓に入ってもそれこそ一瞬で終わってしまうかもしれない。ちょうどこれから盛り上がりそうな卓を見つけ、潜り込む。
 最初は勝ち馬に乗っかっていたが、一度自分でも絞らせてもらったらショボ手。すると、運がないとみなされたか、他の客がみんな自分と逆に張り始める。こうね、卓の客がカードが配られてもチップを置かないんですよ。で、自分が右にチップを置くと、みんなして左にさっとチップを置く(笑)。むっとして自分で絞ったらナチュラル9でオラオラー! 脳汁がドバドバ出た(笑)。
 気付くと手元には元の倍のチップが。ケージで換金し、利確。今回の旅行代が稼げたのでは(稼げてない)。
 自分はギャンブルにはまるタイプでないのだが、ギャンブルにはまる人の気持ちは少し分かったのであった。
 対ありでした!

皇冠小館

 ご機嫌でグランドリスボアから雀仔園まで歩き、夕食は皇冠小館。

 こちらの名物はエビの卵をまぶした麺。

 店主の親父がぐいぐい来るタイプで、竹を使ってこねたこの店の麺は文化遺産なのだとわざわざ翻訳アプリを使ってアピールしてくる。
 おばちゃんが麺と辛味タレを混ぜてくれる。なかなか美味しい。サービスのスープもいい。

 

 

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マカオ香港旅行2026年(1)成田国際空港、香港からバスでマカオへ

旅の準備

 マカオと香港へ旅行した。両方とも初めて。どちらかといえばマカオへ行ってみたくて、香港はついでくらいの気持ちだったけれども、いろいろ調べる内に香港もしっかり見てみたくなった。

  • 1日目 CX527 NRT>HKG 香港市街へ行かず直接マカオへ
  • 3日目 マカオから香港へ
  • 6日目 CX500 HKG>NRT

 航空会社はキャセイパシフィック。マスターカードで決済すると15%引きになるというので試してみた。あ、なるほど、割引になるのは航空運賃本体だけで、燃油サーチャージとかは割引対象外なのね……


 ホテルはマカオも香港も3つ星から4つ星だと1泊2万円以上が当たり前。香港のホテルは3泊で航空券とほとんど変わらないくらいになってもうた。

成田国際空港

 成田第2ターミナル。

 預け荷物システムでなにか障害があったらしく、自動荷物預け機で20分ほど待つ。保安検査は10分ほど。
 スーペリアラウンジ虚空へ。待ちなしで入室。

 ドライカレーなどをいただく。

 機体はA350-900。

 機内安全ビデオは香港の生活文化にちなんだおしゃれなもの。フラッグシップキャリアの工夫を凝らしたビデオ、結構好き。

 機内食はチキンシチュー。まあ。

 これから香港ということで、観たことがなかった『ポリス・ストーリー/香港国際警察』(ジャッキー・チェン/1985)をPrimeビデオダウンロードで視聴。冒頭のカーチェイスが気合入っていて本作はシリアス路線なのだろうかと思っていたら、中盤はゆるゆるコメディ。デパートでの最終決戦はたくさんのアイデアが盛り込まれており今観ても新鮮。

香港国際空港から香港口岸へ

 香港国際空港到着。入国審査、バゲッジクレームは時間かからず。
 本日は香港市街へ向かわずマカオに移動する。香港とマカオは別々の特別行政区のため、それぞれの「口岸」と呼ばれる施設で「出境」「入境」を行う必要がある。
 まず空港から香港側の口岸へバスで移動する。香港の交通系ICカード「八達通」を入手したい。案内所で訊いてみると機場快線の切符売り場で買えるよということで無事に獲得。

 空港のバスターミナルへ。行き先表示が分かりやすい。

 15分ほど待ってB4番バス乗車。

 10分ほどで口岸到着。自動ゲートでパスポートを読み込ませ、出境。

香港口岸からマカオ口岸へ

 マカオ口岸行きのバスへ乗り込む。スーツケースは係員に渡すと車内のスーツケース棚へ置かれる。

 港珠澳大橋という、香港とマカオを結ぶ橋を走行。海の上にこれほど長い橋を架けるとは技術的に大したものだ。気になるのは、土曜夜とはいえ通行しているのが旅客バスくらいというところ。莫大な建設費がかかったと思われるが、元が取れるのだろうか。

 40分かけてマカオ口岸到着。途端にポルトガル語が登場し、マカオを感じさせる。立派な建物だが館内は簡素。マカオ入境はなにごともなく。

マカオ口岸からマカオ市街へ

 マカオ市街への移動もバスのため、出口前右手の便利店でマカオの交通系ICカード「澳門通」を購入。

 10分ほど待ち、101番バス乗車。普通の路線バスだ。

 街中に入ると繁体字の看板、密集した商店と台湾に通じる眺め。新馬路/大豊という停留所で下車。さっきは台湾と感じたけど、この辺りはヨーロッパだ。ヨーロッパなのにアジア要素もあり、不思議な味の街だ。

 新中央酒店というホテルへチェックイン。観光の中心となるセナド広場まで徒歩30秒くらいと交通至便。内装もおしゃれ。枕元に高速充電のUSBポートがあるなど使いやすい作り。

 香港空港到着からホテルまでだいたい次のような所要時間だった。ちょうど3時間かかっている。

  • 18:50~19:15 降機から入国
  • 19:40~19:50 香港B4番バス(空港>香港口岸)
  • 19:50~20:00 香港出境
  • 20:10~20:50 金巴バス(香港口岸>マカオ口岸)
  • 20:50~21:05 マカオ入境
  • 21:15~21:50 マカオ101番バス(マカオ口岸>マカオ市街)

 初めての地でバスを3本乗り継ぐので間違えないよう緊張していたが、全体的に先進国で公共交通機関が信頼できる感じである。

 それでは明日から一日半、マカオを楽しみたいと思います。

 

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『オデュッセイア』(クリストファー・ノーラン/2026)

 古代ギリシアのホメロスによる叙事詩『オデュッセイア』の映画化。ギリシア都市イタケの英雄オデュッセウスは、巨大な木馬を用いた作戦により、ライバル都市トロイアを滅ぼすことに成功した。しかし、故郷への帰路は困難に満ちたものであった――
 主人公オデュッセウスを演じたのはマット・デイモン。他、アン・ハサウェイ、トム・ホランド、ロバート・パティンソン、ルピタ・ニョンゴ、シャーリーズ・セロン、ゼンデイヤ、ミア・ゴスら豪華俳優陣が出演。『ダークナイト』(2008)、『インターステラー』(2014)などで知られるクリストファー・ノーランが監督、脚本、製作を務めた。全編IMAXカメラで撮影されていることも話題となっている。

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 好きか嫌いかは置いておいて、すごい映像迫力だなと思った。ノーランさん、マジだよ。大マジ。

 物語はイタケの城で求婚者たちが宴を楽しんでいる場面から始まる。王妃ペネロペは出征したきり帰らぬ夫オデュッセウスを頑なに待っている。息子のテレマコスは求婚者たちの増長をよしとせず、父の捜索のため密かに船でスパルタへ向かう。
 テレマコスを迎え入れたスパルタ王とその妃ヘレネは、オデュッセウスと共に成し遂げたトロイア攻略の顛末を語る。オデュッセウスは巨大な木馬を作り、仲間と共にその中へ潜む。トロイアの住民たちが木馬を城内へ引き入れた夜、オデュッセウスたちは木馬から飛び出し、城門を開けて自軍を呼び込んだ。
 しかし、その帰路、オデュッセウスたちは一つ目キュクロプスや武装した大男たち、魔女キルケに襲われるなど、苦難な道のりとなった。そしてとうとうオデュッセウスは消息を絶つ――

 まさにクリストファー・ノーランの語る叙事詩という感じで、荘重な物語をまったく荘重に描いている。例えば、一つ目キュクロプスの洞窟からの脱出の際、目の見えなくなったキュクロプスを欺くため、オデュッセウスたちは草をからだに巻き付け羊の振りをする(原作は羊の腹にしがみついて欺く)。ともすれば昔話調の牧歌的な場面だが、ノーランは緊迫感たっぷりに描く。
 一方、原作通りらしいのだが、主人公オデュッセウスがなかなか登場せず、しばらくテレマコスやアンティノオスといった脇役がああでもないこうでもないとやっているので、序盤はなんの話をしているのかいまいちついていけなかった。ここはもう少しアレンジしてもいいのでないか。ハイライトであるトロイア攻略から始めるとか。中盤以降は物語の構造が理解できたので普通に楽しめた。
 オデュッセウスは仲間を失い、一度は目的地を見失ってしまうも、再び立ち上がり、英雄として帰還する。おとぎ話を大マジの描くところも含め、自分は『ダークナイト ライジング』(2012)を想起した。しかし、『オデュッセイア』が元ネタでしたか。そうですか。
 映像面では、CGを使わないことにこだわるノーランなので、トロイアの街並みも木馬も海原での操舵も全部本物なんだろうなと思って観ていた。しかし、トロイア、セットでないとしたらどこで撮影してたの、というとモロッコのアイット=ベン=ハドゥの集落ですか、なるほど……

 最後に、自分は一般公開初日にTOHOシネマズのIMAXレーザーで観た。鑑賞料金は2,900円。なかなかのお値段だと思うし、終了が深夜帯になるにも関わらず、若い人を中心に満席であった。盛り上がっているようでとても素晴らしい。

The Odyssey (2CD) (Digipak)

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『オークストリートの異変』(デヴィッド・ロバート・ミッチェル/2026)

 アメリカ郊外で暮らすプラット一家は、少しぎくしゃくしたところを抱えながらも、平穏に暮らしていた。ある夜、停電が起こり、それ以降、町を恐竜たちが闊歩し、住民は次々とその餌食になってしまった。果たしてプラット一家はここから逃げ出すことができるのか――!?
 出演はアン・ハサウェイ、ユアン・マクレガーなど。監督・脚本は2014年にホラー映画『イット・フォローズ』で一躍名を馳せたデヴィッド・ロバート・ミッチェル。

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 1980年代リバイバル的なテイストで手堅くまとまってはいるが、恐竜映画と思って観に行くと個人的に少し物足りないところがあった。

 1982年、アメリカ郊外のオークストリート。プラット一家の父グレッグはようやく正社員の職に就けたが、ピザ配達のバイトも辞めず、家族との時間を十分にもてずにいる。母デニースは作家になる夢を捨てられず、近所の作家夫人に習作を添削してもらっている。娘オードリーは天文学者になることを夢見ている。息子ブライアンは近所の悪ガキとひと悶着を抱えている。
 デニースは、作家夫人に家の裏庭に生えてきた不思議な植物を見てほしいと言われ、ポラロイドカメラに撮り、図書館で調べる。それはどうやら二億年前に絶滅した植物のようだった。また、隣家より、プラット家の飼い犬スターバックが庭に糞をした、と怒鳴り込まれるが、それはドラム缶ほどもある巨大な糞で、犬がやったとは思えないものだった。
 ある夜、まばゆい光と突風が吹き、町は停電となる。グレッグとデニースが通りを探索すると、突如現れた恐竜から襲われそうになる。町は無数の恐竜が跋扈するようになっていた。一家は車で脱出しようとするが、オークストリートはいつしか広大な原生林に取り囲まれていたのだった――

※ネタバレしています。

 自分は恐竜映画だと、どうやって現代アメリカ郊外に恐竜を登場させるんだろう、という物語内の理屈のつけ方を期待して観るんだけど、本作は逆でむしろアメリカ郊外が中生代に飛ばされる話だった。『漂流教室』方式!
 本編開始前の映画会社のロゴの時点で、劇伴が1980年代風で「ん? これってもしかして『E.T.』とか『グーニーズ』とかそういうテイストの作品?」と思った。物語が始まると、夫婦の不和や思春期の少年少女が描かれ、太陽フレアが異常活動しているというラジオ放送があり、ああ、これはマイクル・クライトン的なSFアイデアを楽しむ映画でなく、恐竜の出現を通して家族の再生を描く映画なのね、と察した。
 ちょうど日本で同時期に公開された『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』(ルーク・スパーク/2025)が、恐竜を他のものへ置き換えるのが不可能であるのに比べて、本作『オークストリートの異変』は一家に恐怖と混乱をもたらすものなら恐竜以外でも問題なく、恐竜映画としては物足りなく感じた。ただ、これまで観た恐竜映画の中では断トツで羽毛恐竜が登場する。その点は素直に素晴らしい。半分くらいは羽毛恐竜だったような。
 恐竜といえば、一匹、巨大なウツボみたいなやつ、いましたよね。あれはなに? と思ってんだけど、ティタノボアという、白亜紀のあとの時代にいた巨大な蛇らしい。*1
 で、お話の中身ですが、家族の人となりや隣近所との関係性を手際よく描くのは好ましい一方、中盤、家の外が危険だっていってるのに息子が犬を探しに勝手に家を出ていく、それを追って娘も勝手に出ていく、と子供が(プロット上の)足手まといになるというか、なんなら大人も行き当たりばったりで行動しているようで、ちょっとなんだかな。明らかな危険地帯を移動しているのにいつもうしろががら空きである。
 監督のデヴィッド・ロバート・ミッチェルは『イット・フォローズ』のムーディーな映像美が印象的だったが、本作は1980年代リバイバル風活劇で、作風が全然違うので意外に感じた。しかし、インタビューを読む限り本作は雇われでなく彼の持ち込み企画らしいんだよな。

 

 

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*1:「ホラー的な演出も、たぶん予想以上に(笑)」D・R・ミッチェル監督が語る恐竜ムービー『オークストリートの異変』 | 映画 | あなたが観たい、おすすめ映画・ドラマが一発でみつかる BANGER!!!(バンガー) 映画愛、爆発!!!
https://www.banger.jp/movie/178932/

『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』(ルーク・スパーク/2025)

 アメリカ人作家イーサン・ペッタス原作の同名SF小説の映画化。ベトナム戦争のさなか、アメリカ軍兵士たちは密林で恐竜に遭遇する。現代の軍隊と恐竜の激突が始まるのだった――
 出演はライアン・クワンテン、トリシア・ヘルファー、ジェレミー・ピヴェンら。監督は『オキュペーション -侵略-』(2018)などの作品があるオーストラリア出身のルーク・スパーク。メジャー資本は入っておらず、スパーク監督自身のスタジオ中心に制作されている。

www.youtube.com「ジュラシック・ワールド」シリーズが、そのオリジンをスティーヴン・スピルバーグが手掛けたという出自からして、基本的に冒険活劇であり、特に近作は恐竜がモンスターの一種と化している中、本作は「恐竜ってのはな、人間を食べ物だと思ってんだよ!」というの前面に押し出しており、とてもいい。B級であるのは間違いないので、「ベトナム戦争+恐竜」というキーワードでぴんと来る向きは観た方がよいと思うけど、ぴんと来ない人は……である。

 1968年、ベトナム。グリーンベレーの精鋭部隊が密林で消息を絶つ。一方、アメリカ軍「ハゲワシ小隊」は隊長ベイカーを始め、腕は立つがはみ出し者の集まりだった。ベトコンが潜伏する村の掃討を終え野営地へ帰還した彼らに、行方不明のグリーンベレーを捜索する任務が与えられる。
 夜、ヘリコプターからジャングルへ降り立ったベイカーらは、巨大な鳥のような足跡を見つける。追跡のため潜った洞窟で、彼らは羽毛の生えた人間ほどの大きさのトカゲの群れに襲われ、離れ離れになる。ベイカーと部下のレオンは眠りから目覚めたティラノサウルスと遭遇する。ここはどういうわけか恐竜が跋扈する密林と化していたのだった――

※ネタバレしています。

 まあ、どういうわけかというと、ソ連の悪の科学者がワープ装置を開発していた時に間違えて太古との時空トンネルを開通してしまったため、ということなんですけどね(観ていてそういう理由以外に説明つけられないだろうとは思っていた。マイクル・クライトン的なSFアイデアがあるわけではない)。
 本作は、「ジュラシック・ワールド」シリーズとの差別化として、恐竜が怖い、に改めて取り組んだ作品だと考える。もちろん、近作『ジュラシック・ワールド/復活の大地』(2025)とかだって恐竜の怖さを描いているのだが、本作は「真っ暗な洞窟で、ユタラプトルの群れの襲ってくるさまが、銃の閃光で断続的に見える」(『リベリオン』みたいなやつです)とか、「デイノニクスやケツァルコアトルスに打ち負けるとはらわたを引き裂かれて捕食される」とか、生理的に訴えかける怖さがあって、よかった(『ジュラシック・ワールド/復活の大地』との差別化でいうと、羽毛恐竜が出てきてたのもよかった)。
 話運びは、序盤、はみ出し者部隊が指令により密林で消息を絶った別部隊を捜索するも正体不明の存在に襲われて――とまるで『プレデター』(1987)で、地元の人が「彼は鳥の妖怪にさらわれた」的な発言をするあたり、監督も間違いなく念頭に置いていると思う。野営地での休息の一コマは「ハゲワシ小隊」の面々の紹介という役割があったんだと思いますが、長い割にいまいちうまくなかったかな……
 後半の川下り以降はちょっと話運びが雑というか、ソ連の悪の科学者がもう一度ワープ装置を作動させるとブラックホールができて世界が破滅してしまう、だから俺たちで倒そう、っていうのも若干「?」ですが、隊員の一人が「なんで俺たちがやるんだよ、そんなの偉いやつらに任せたらいいじゃないか」と反論してて、ごもっとも……
 クライマックス、ユタラプトルの大群を、アメリカ軍が撃って撃って撃ちまくるの、ありそうでなかったので面白かったです。あと、ヒロインが唐突に(マジで唐突に)二丁拳銃で応戦し始めるの、なんなの。
 エンドクレジット、1960年代フィルム風の画質でベトナム戦争に恐竜が溶け込んでいるさまを描いているの、よかった。

 全体的に、磨き抜かれた傑作とは言えないんだけど、恐竜と米軍が激突したらというシチュエーションには真正面に取り組んでいて、作り手の真摯な情熱を感じました。個人的には結構好き。

 

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『死亡通知書 宿命』(周浩暉/2010)

 2020年に邦訳された周浩暉による推理小説『死亡通知書 暗黒者』の続編。罪を逃れた悪人たちへ「死亡通知書」を送り予告通り殺害していく謎の殺人鬼「エウメニデス」。警察専従班は遂にエウメニデスの正体を掴んだが、そこには二十年に及ぶ壮絶な「宿命」が秘められていたのだった――
 著者の周浩暉は中国の推理作家。日本では前述『死亡通知書 暗黒者』の他、本作同様羅飛刑事が探偵役を務める『邪悪催眠師』、『7人殺される』が邦訳されている。

 追跡劇あり、密室殺人あり、猟奇殺人あり、と全部盛り。そしてトレードマークの異様にスピーディーな展開は健在。最高の娯楽小説だと思う。
 一点注意なのは、思い切り前作『死亡通知書 暗黒者』の続編で、『暗黒者』を読んでいるのが前提になっていること。『暗黒者』もめちゃ面白なので是非読了してから本作『宿命』を読んでもらいたい。

 前作『暗黒者』の結末直後から物語は始まる。
 初代「エウメニデス」は爆死した。しかし、弟子である二代目「エウメニデス」は早くも「死亡通知書」を再開し、担任教師を嘲弄した高校生たちを処刑するのだった。
 一方、警察は、刑事隊長の韓灝(ハン・ハオ)がエウメニデスの陥穽にはまり龍于(ロンユー)グループ社長鄧驊(ドン・ホワ)を手にかけたことにより逮捕、収監されたため、龍州市から「エウメニデス」を追いかけてきた刑事・羅飛(ルオ・フェイ)を省都刑事隊長へ昇格させた。ところが、韓灝は監視の目を欺き脱獄する。
 鄧驊亡きあと、龍于グループでは残された幹部たちが後継者争いを始めていた。鄧驊の側近で彼を慕っていた阿華(アーホワ)は冷めた目でそれを見つめる。
 その頃、エウメニデスはレストランで演奏する盲目の女性バイオリニストへ思いを寄せていた。龍于グループの阿勝(アーション)が酒に酔ってそのバイオリニストへ絡んだことから、エウメニデスは阿勝を自動車事故に見せかけて抹殺する。そして、エウメニデスは警察の資料庫へ潜入し、ある事件のファイルを調べた。その事件とは、20年前に発生した「一三〇立てこもり事件」。これこそが登場人物たちの戦いを宿命づけた、最初のきっかけとなる事件であった――

 ※ネタバレしています。

 前作は羅飛ら犯罪捜査の専門家が集まった警察専従班たちと、天才犯罪者「エウメニデス」の対決が主題だった。本作はそれに加え、恩人である鄧驊をエウメニデスに殺され復讐を誓う反社会企業「龍于」グループの阿華、エウメニデスに騙され鄧驊を手にかけてしまい警察に追われる元刑事隊長韓灝、という四つの勢力が時に争い、時に手を組む、という一層先に読めない構成になっている。
 これだけだと複雑になってしまいそうなところを、著者周浩暉は読者を置いてけぼりにしないよう、局面局面はシンプルなシチュエーションとなるよう気を配っている。例えば、第四章「地下鉄の攻防」は羅飛たちが(エウメニデスそっちのけで)韓灝を追跡する場面のみを描いているし、その次の第五章「誘導」は羅飛たちが(今度は韓灝を忘れて)エウメニデスとの激突するのに焦点を絞っている。この章は誰と誰が戦ってますよというのが明確なので、敵味方が入れ変わっていくような展開でも、混乱せずに読み進めることができる。
 警察と犯罪者の攻防を描くスリラーで話が進むのかと思っていると、急に密室殺人が起こり、謎解きパートが始まるので油断ならない。監視カメラが回っている高層ビルの一室で二人が斬殺され、犯人が忽然と姿を消す、という謎だ。ちなみに、この章のタイトルは「発泡スチロール人間」。電人Mみたいで味がある。
 終盤、残りページ数が少なくなったにも関わらず、今度は十年前に発生した未解決猟奇殺人の犯人像のプロファイリングを始めたりして、これどうやって話畳むんだよという緊張感から、剛速球ですべての風呂敷を畳みこむのも素晴らしい。
 韓灝が意外なところから登場したり(ホテルからターゲットを狙うエウメニデス……の振りをした刑事……を実は監視していたホテルマン!?)、エウメニデスが意外なところから登場したり(エウメニデスに命を狙われるチンピラネットジャーナリストが実はエウメニデス!)、この辺はディーヴァー味ですかね。
 あと、殺し屋が負い目のある盲目の女性音楽家を周囲から保護しつつ、目の手術を受けさせようとするの、ジョン・ウーの映画『狼/男たちの挽歌・最終章』か……!

 前作『死亡通知書 暗黒者』とおなじような感想になってしまうけれども、複数のジャンルを盛り込みつつ、最初から最後までスピーディーかつツイストを効かせ展開で読者を飽きさせない。
 是非、続編『死亡通知書 離別曲』も邦訳してほしい!

 

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『ウジェーヌ・ブーダン展――瞬間の美学、光の探求』(SOMPO美術館/2026)

 19世紀フランスの画家ウジェーヌ・ブーダンを扱った展覧会。東京・新宿のSOMPO美術館にて開催。長野の松本市美術館、山梨の山梨県立美術館、群馬の群馬県立近代美術館、京都の美術館「えき」京都へも巡回予定。

 恥ずかしながらウジェーヌ・ブーダンという人をこの展覧会で初めて知った。フランスで印象派に先駆けて戸外制作を重視した風景画を手掛け、クロード・モネへ影響を与えたらしい。フランス北部ノルマンディーを拠点とした人でもあった。

 展示は3つのフロアに分かれている。上の階から降りていくスタイルで、5階が「I. 海景―海景画家の誕生」。アイキャッチにもなっている、海辺を描くような代表作が展示されている。このフロアは基本的に写真撮影可。次に4階が「II. 空―瞬間の美学、光の探求」、「III. 風景―バルビゾン派からの学び」、「IV. 建築―旅する画家が見た風景」。最後の3階が「V. 動物―身近なものへの眼差し」、「VI. 人物―戸外の群像表現」。

 ブーダンは絵画アカデミー教育を受けたわけでなかったが、ノルマンディーの港町ル・アーブルで画材店を営みながら著名な画家と交流する内に、絵を描くことに目覚めた。市から奨学金を得て、ルーヴル美術館で名画の模写へ取り組んだ。この頃にブーダンが模写したロイスダールの風景画とヴァトーの『シテール島への巡礼』も展示されている。余談だが、自分もルーヴル美術館で『シテール島への巡礼』を見たことがあるので、ブーダンへ親近感を覚えた。ブーダンの模写は本物に比べだいぶ茶色っぽい印象だが……
 ノルマンディーへ戻ったブーダンは稼ぎのためにと当時流行っていた風景画に手を出す。
『ベルク、海岸』(ル・トゥケ=パリ・プラージュ美術館)。

『ドーヴィル』(ランス美術館)。

 食い扶持のためとはいえ、ブーダンなりのこだわりがあった。一つは、彼がルーヴルで習得したような17世紀オランダ風景画的な構図。もう一つは、天候による空や海の色の変化を敏感に捉えること。
 ブーダンは海辺を描くのがトレードマークのようだが、展示フロアを進んでいくと、内陸の風景画も手掛けていることが分かる。『トルーヴィル街道、ル・ビュタン近郊』(ウジェーヌ・ブーダン美術館)、『ドルトレヒト』(リベレツ州立美術館)などどれも実直な味わいがある。ちなみに、ブーダンは1824年に生まれ、1898年に没した。印象派の語源になったクロード・モネの『印象・日の出』が1872年。ブーダンの晩年はやはり印象派の影響を受けたのか、筆致が大胆になっていく。
 さらに『魚、エイ、トラザメのある静物』(ウジェーヌ・ブーダン美術館)のような典型的な静物画や、『ドゥアルネ湾(フィニステール)のサンタンヌ=ラ=パリュのパルドン祭』(アンドレ・マルロー近代美術館)のような宗教画、歴史画を思わせる構図の作品なども登場し、海と空の画家という印象をもっていたところに意表を突かれる。

 全体として、始めの展示室に画家のイメージである海辺の作品群を配置、かつ、写真撮影を可とすることで観客の期待感を十分に満たしたのち、ブーダンの幅広い作風を順番に見せる、という展示構成の妙に唸った。大変よく考えられている。