ぶりだいこんブログ

推理小説とか乃木坂46の話をしています。

乃木坂46「アトノマツリ」ミュージックビデオ(林瑠奈/2022)

 乃木坂46の31stシングル『ここにはないもの』のカップリング曲「アトノマツリ」は、メンバーである林瑠奈がミュージックビデオを作っており、これがとてもよかったのでちょっとびっくりしてしまった。

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 アウトラインから紹介すると、2022年12月に発売され、これまでグループの顔を務めてきた1期生齋藤飛鳥の卒業センターのシングル『ここにはないもの』はカップリングが6曲あり、「アトノマツリ」はその中の一つである。4期生メンバー遠藤さくら、賀喜遥香、北川悠理、林瑠奈、弓木奈於の5名が参加している、90年代風のヒップホップ調楽曲である。
 ミュージックビデオを製作(編集)した林は乃木坂46加入後に大学へ進学し映像制作を学んでいるらしく、その成果がファンの前に恐らく初めて登場した形である。

 まず、メインボーカルである北川と林のラップパフォーマンスがよい。メロウな味がちゃんと出ている。
 本作は秋元康作詞で韻を踏んだ歌詞でないため、二人の実力が分かりづらいかもしれないけれども、ライブで披露した別のラップがうまくてこれまたちょっとびっくりしてしまった。

 それから、メンバーの演技とも日常ともつかない浮遊感のある佇まいがよい。撮影時は、乃木坂46の公式MVを何度も手掛けた映像作家の伊藤衆人が「アドバイザリー」として同行しているのみで、他にスタッフはおらず、メンバー同士でスマートフォンを使って撮ったものを編集したという話だ。写真集『乃木撮』にも見られるような、「大人」がいないところでの「自然体」の雰囲気が大変微笑ましい(もちろん、アイドルなので鍵括弧つきの「自然体」ですが)。
 ミュージックビデオ全体として、「セルフメイキング」というだけあって、同人的というか、プロが作った他のMVと比べても、創作欲求が前に立っている感じがして、とてもよい。もちろん、プロの映像作家は注文通りにクオリティの高いものを作り、かつ、そこに自分ならではの味を混ぜるから偉いのだけれども、このMVは注文があったわけでなく、自分たちが作りたくて作った、というのが伝わってくるのだ。
 製作の経緯は北川のブログで述べられている。

実は私達、去年自分達でラップユニットを結成していたのです。

(中略)
まずは、2人でお互いの自己紹介ラップを試しに作ってみて、
今野さんに結成の旨を動画を送って報告して、
乃木坂スター誕生!のスタッフさんに、トラックの作り方を教えて頂いたり、
番組で披露させて頂きたいとお願いしに行ったり、実はお仕事の合間を縫って色々と頑張っていました。笑

2人で大きな目標を立てて、おおまかなスケジュールを決めて、
締め切りまでにお互い〇個リリックを書いてくるという宿題を出し合って、
お仕事の合間に練習して。
そうしていたらたくさんの方がご協力くださって、
番組で2回ほど披露させて頂けたり、
YouTubeで企画にして頂けたり、
今年はライブでも披露させて頂けたり。

そして今回、こうして楽曲やMVを作って頂けました。

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 乃木坂46でメンバーの発信からプロダクトになったものとしては、生田絵梨花松村沙友理が企画書を書いたというユニット「からあげ姉妹」や、生田と伊藤万理華がやはり自作した「遥かなるブータン」のミュージックビデオがある。「遥かなるブータン」の手作り感も味なのだが、比べると本作「アトノマツリ」のクオリティは目を見張るものがあろう。

 Youtubeのコメント欄を眺めると他楽曲に比べて外国人のコメントが多いように思われる。何語か分からなかったものもあって、Google翻訳にかけたらインドネシア語だった。インドネシアの人がこの楽曲を気に入るのは分かる気がする。

 最後に、映像を眺めながら一つのことが気になった。本MVは5人のメンバーが撮影者になったり被写体になったり気ままに切り替わっていく。ある程度コンテやリハはあったと思うし、別にワンカットというわけでもないのだが、誰がどこで撮影担当になるか、さすがにその場での指示出しは必要だろう。それはどうやったのか?
 メンバーはずっと歌っているか撮っているかしているので、指示ができたとすると同行していた伊藤衆人くらいしかいないのでないかと考えた。林が、リスペクトする伊藤をADのように使っていた、と想像するとちょっと面白い。*1

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*1:林瑠奈公式ブログ「ご報告」(2022.04.28)より
「大学で「きっかけとなった作品や監督は?」みたいなテーマで自己紹介したとき、伊藤衆人監督の話をしました。
挙動不審になりながら笑」
https://www.nogizaka46.com/s/n46/diary/detail/100216