ぶりだいこんブログ

推理小説とか乃木坂46の話をしています。

『左様なら今晩は』(高橋名月/2022)

 一人暮らしのサラリーマン陽平の部屋に、突如女の幽霊が出現する。やけに親しげに話しかけてくる幽霊を、陽平は「愛助」と名付け、徐々に打ち解けていくが――
 出演は乃木坂46の久保史緒里、萩原利久ら。監督は1996年生まれで、『正しいバスの見分け方』(2015)にて初監督を務めた、高橋名月。

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 自分は乃木坂46を応援している。現役メンバーの主演作くらいは観ておこうと考えており、本作も観に行った。始めに「一般映画」としてどうか、次の「乃木坂46映画」としてどうか、を述べたい。

一般映画としての視点

 映画の舞台は広島県尾道市である。主人公の陽平は独身で、一人暮らしで、会社勤めで、標準語で喋っているため、関東出身だが全国拠点の企業へ入社後に尾道の支店に配属された、と推測される(作中、職場で「いつか東京へ戻るのか」というような話題があることも傍証だろう)。この設定にストーリー上どのような意味があるのだろうと思って映画を観ていると、特にないようなので肩透かしを食らったような気分になる。お話として、主人公は一人暮らしであることだけが要件と思われ、東京が舞台でも十分に成立する。尾道を舞台にしたいという先行的な欲求(もしくは要求)があったのかもしれない。とすれば、陽平もその辺りの出身として方言を喋らせてもよかった。
 それから、部屋で幽霊が姿を現すようになった時の、主人公陽平のリアクションが少し呑み込みづらい。自分がおなじ立場だったらどうするだろうか? まず、怖くて自室にしばらく近寄れないと思う。ビジネスホテルか漫画喫茶へ避難するのでないか。次に友達か家族を誘って様子を見に行くだろう。自分の頭がおかしくなっているのでないかという心配もあるので、第三者がいた方が安心だ。しかし、陽平の対応はそのどれでもない。怖がりつつも自室へ毎日帰宅し、霊能力者をあたるのかと思いきやそういうわけでもなく、実に状況に受け身である。幽霊と結構会話が通じるからかもしれない。としたら、逆にもうちょっと根掘り葉掘り事情を聞き出していいような気もする。
 陽平の独り言が多いことも気になった。普通の実写映画でモノローグ代わりに独り言を喋る人物がいると不自然に感じて没入できない。演劇とかなら大きな問題でないかもしれない(でも、独り言を言わせない演劇も別に珍しくない)。
 若い監督の映画に、テーマでないところでごちゃごちゃ言うのは、自分でも老害だなと思う。
 独身サラリーマンと可愛い幽霊のちょっととぼけた感じのコミュニケーションが見せ場なのだと解釈している。ただ、そういった超常現象を前提とした映画なら、むしろ丁寧に連れて行ってもらわないとちょっと引いてしまうところがある。
 よかったところも書こう。周囲の登場人物は概ねよかったと思う。顧客の老人に振り回されつつも飄々とした感じの不動産屋、霊能力をもつスナックのママ、など。

乃木坂46映画としての視点

 久保史緒里さんは雑誌「セブンティーン」の専属モデル、ラジオ「オールナイトニッポン」のパーソナリティも務めている、乃木坂46の人気メンバーの一人です。グループの中でも特に演技力が高いと言われており、これまで複数の演劇作品で主役級を務めていましたが、満を持しての長編映画初主演です。また、2023年のNHK大河ドラマ『どうする家康』への出演も決定しています。
 本作は久保さんのキュートさを前提、かつ全面に押し出した映画なので、久保さんのファンであればマストウォッチでしょう。久保さんの演技もよく、特に声を張り上げない場面のうまさは本作でも十分に発揮されていると感じます。
 恋愛映画なのでキスシーンはありますが、唇が触れ合うところは隠す演出となっています。『ホットギミック ガールミーツボーイ』(2019)で当時乃木坂46メンバーだった堀未央奈さんはがっつりしていました。堀さんがOKで久保さんがNGとなる境界線はなんなのでしょうか……(個人的には全然OKだと思いますが、こと久保さんに限っては悶死しそうな人がいそうなのも感覚的には理解できる……)

 

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