ぶりだいこんブログ

推理小説とか乃木坂46の話をしています。

『世の中にたえて桜のなかりせば』(三宅伸行/2022)

 高校生の咲は80代の敬三と共に「終活」のアドバイザーを務める。二人のもとに様々な人物が訪れ、人生の最期になにをなすべきかを相談する。そして、咲と敬三もまた自分自身と向き合っていくのだった――
 宝田明乃木坂46岩本蓮加のダブル主演。エグゼクティブプロデューサーも務める宝田は公開直前に急逝し、本作が遺作となった。他、吉行和子徳井優、土居志央梨らが出演。監督は三宅伸行。

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 自分は乃木坂46を応援しており、現役メンバーの主演作くらいは観ておこうと思い、劇場へ足を運んだ。始めに「一般映画」としてどうか、次の「乃木坂46映画」としてどうか、を述べたい。

ネタバレしています。

一般映画としての視点

 脚本があって、役者が演技して、カット割りがあって、劇伴があれば、映画になる。映画になるが、面白い映画になるとは限らない……ということを改めて感じさせられた。他の映画にない際立った特色がなにか一つでもあれば全体的な完成度が高くなくても観られたりするものだが、そういうものがあるとも言い難い。逆に、昨今の娯楽映画がいかに脚本と演出の密度を高め、また、いかに観客へ新鮮な驚きをもたらそうと創意工夫しているか、よく理解できた。
 以下にいくつか個別の欠点を述べる。
 まず、本作の主な舞台となる「終活」の相談窓口「ハレノヒ」の運営形態が不明瞭である。企業なのか、非営利団体なのか、なんなのか。そして、広範な知識とヒューマンスキルが必要と思われる「終活」のアドバイザーを高校生が務めており、そして、相談者がその点になんの引っ掛かりも覚えず素直に相談している、という点が非常に呑み込みづらい。つまり、出だしの設定でまずつまずいてしまうのである。
 次に、相談者に対して「部屋を片付けた方がいい」という雑なアドバイスや、素人が自伝映画を撮ってあげるという雑な対応をしているにも関わらず、相談者は大変満足しているようである。この点も呑み込みづらい。
 老人と高校生が終活の悩みを解決する、という一種のおとぎ話を、細部を詰めずに押し通してしまったので、地に足の着いていないストーリー展開になってしまったのだろうか。*1
 よいところはないのかというと、宝田明の演技がよい。飄々としつつも若者をさりげなく見守る姿を(当たり前だが)実に自然に演じている。

乃木坂46映画としての視点

 主演の岩本蓮加さん、演技が抜群にうまいとは言えないけれども、ルックスと佇まいはザ・アイドル女優。個人的に乃木坂46の中でも特に顔立ちの端正なメンバーだと思っていますが、比較的年少ということもあり、グループ内での人気度は中位といったところ。しかし、スクリーンに映ると一層磨きがかかり、文句なしの美少女です。おれたちのれんたんがこんなに立派に……(今、僕、早口で喋ってますかね……)
 逆に美少女過ぎるので、相談者や同級生が普通に接しててかえって違和感を覚えます。こんな美人のクラスメートが仲よくしてくれたら絶対どぎまぎしちゃうでしょ! 一方、劇中での身なりがビジュアルといまいち合っていないような……(本人の体現するルックスとは別に、作中の「咲」はそういう位置づけのキャラクターなのかもしれません)
 あと、『ホットギミック ガールミーツボーイ』(山戸結希/2019)などと違い、乃木坂46運営元であるソニーミュージックの資本が本作には入っていないようで、なるほど……と思いました。

 総じて、映画としての出来は……ですが、岩本蓮加さんのファンはマストウォッチということになるでしょうか。

 ちなみに、乃木坂46としての岩本蓮加さんといえば、20枚目シングルのカップリングで、センターを務めた楽曲「トキトキメキメキ」でしょう。

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*1:余談ですが、「学生の主人公が学外で居場所を見つける」、「生徒からのいじめで教師が職を辞す」、「主人公がいじめの首謀者に掴みかかる」という物語のパーツを取り出すと、新海誠の映画『言の葉の庭』(2013)のようです