ぶりだいこんブログ

推理小説とか乃木坂46の話をしています。

「ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史」(国立西洋美術館/2019)

 日墺友好150周年を記念し、オーストリアを本拠地としてヨーロッパで強大な権勢を振るった一族、ハプスブルク家が収集した美術品を取り揃えた特別展。ウィーンの美術史美術館、およびブダペスト国立西洋美術館より絵画、甲冑、工芸品などが出展されている。東京上野の国立西洋美術館で開催。f:id:pure_flat:20191026222741j:plain

 オーストリアハプスブルク家のコレクションといえば美術史美術館なので観る前は単純に「美術史美術館展」的なものかと思っていたが、前述の通りブダペスト国立西洋美術館の収蔵品もあるし、ハプスブルク家がコレクションをどのように拡充させたかを彼ら自身の歴史と共に概説する、という考えられた構成だった。スペインやネーデルランド支配下におくことによってその地の名品が収集される。「美術史」と「世界史」はちゃんとリンクしているのである。

 最大の目玉はベラスケスの諸作だろう。『青いドレスの王女マルガリータ』などは美術史美術館の中でも目玉の一つだろうに、貸し出してくれるものなんですね(全体的に観ると、逆に「『青いドレスの王女マルガリータ』で堪忍してや」という感じですが)。ベラスケスを生で観たの初めてだな……
 あとは意外と甲冑の展示が面白かった。フェルディナント2世の甲冑なんて神聖ローマ皇帝のものだから大変スタイリッシュなんですね。しかし、全身鉄でいかにも重量がありそうで実用性はあったのだろうか。
 その他気になった作品を個別に(画像があるものはWeb Gallery of Artへリンク)。
『堕罪の場面のある楽園の風景』 (ヤン・ブリューゲル(父)/1612~1613/ブタペスト国立西洋美術館)。アダムとイブがリンゴを食べてしまう場面だが、解説文にもある通り、アダムとイブは遠景に小さく描かれているのみで明らかに色とりどりの動物たちを描きたかったと思われる。そういう発想も可愛いし、動物たちもなんか可愛い。
『村の縁日』(ダーフィット・テニールス(子)/1647/美術史美術館)。バロック期の農村を描いた絵画って好きなんですよ。似たような構図のものを他にも描いているようですね。テニールスの代表作は『ブリュッセルにおけるレオポルト・ ウィルヘルム大公の画廊』ですが、これは出展されていません。
『ソロモンの塗油』(コルネリス・デ・フォス/1630/美術史美術館)。分かりやすくバロックな絵画。ルーベンスの影響が強そう(ウィキペディアでもそのような言及が )。*1
『バート・イシュルのオーストリアハンガリー二重帝国皇帝フランツ・ヨーゼフ1世(1830-1916)とセルビア王アレクサンダル(1876-1903)』(ベルトリト・リッパイ/1891/美術史美術館)。元首二人が馬車で街中を巡っている。既に印象派からポスト印象派の頃だが、時流の影響は感じさせない(報道写真のようなものなのだろうから当たり前かもしれないが)。

 訪れたのは夜間開館時だった。人がいないということはないが、東京国立博物館の「正倉院展」に比べれば十分に鑑賞しやすい程度の入りだった。
 コレクションの経緯からしルネサンスからバロックの絵画が豊富にあり、バロック絵画好きの自分としてはとても楽しめた。それはそれとして、この20倍は展示があるだろうと思われる本家、美術史美術館へ行ってみたいものだと改めて思った。

*1:https://en.wikipedia.org/wiki/Cornelis_de_Vos
“His early work shows a clear influence by Rubens in terms of subject matter, motifs and Carravagesque influences.”