ぶりだいこんブログ

推理小説とか乃木坂46の話をしています。

「ルーベンス展―バロックの誕生」(国立西洋美術館/2018)

 ピーテル・パウルルーベンス(1577~1640)はスペイン領ネーデルランド(現在のベルギー)の画家で、バロック絵画の代表的な存在。工房を設け多くのスタッフを使うことで大量の作品を世に送り出した。代表作として『マリー・ド・メディシスの生涯』、『レウキッポスの娘たちの略奪』などがある。
ルーベンス展―バロックの誕生」は、バロックの前の時代にあたるルネサンス期美術から影響をテーマに、欧米を中心とした様々な美術館のルーベンス収蔵作品を展示した、国立西洋美術館の企画展である。

f:id:pure_flat:20181027133932j:plain

 ルーベンスルネサンスに影響を受けたというのは知識としては知っていたが、実際に一連の展示として眺めると改めて納得ができる。ルーベンスは20代の頃に故郷のアントウェルペンを離れイタリアで暮らした。その際にヘレニズム彫刻やルネサンス絵画等様々な先行美術の模写を行っていた。そのスケッチが展示されている。ルーベンスですら過去の名作からこれほど学ぼうとしていたのだから、いわんや我々をや、である。
 実際の展示から。
 1枚目はルーベンスの自画像(1623以降/ウフィツィ美術館)で、え、自画像借りられたの? とびっくりしたけれど、よく見たら「自画像の模写」だった。ですよねー。
『髭をはやした男の頭部』(ルーベンス/1609頃/ローマ国立古典美術館)は、解説によると、特定の人物の肖像画ではなく、モブキャラのバリエーションを増やすための習作とのこと。ルーベンスでもそういう練習するんですね。
アベルの死』(ルーベンス/1617/ボブ・ジョーンズ大学美術館)、元々はヨハネの死だったんだけど、あとで別の人が首から上と脇の犬を描き足して主題をアベルの死に変えてしまった、という解説を読んで「え?」と困惑する。
法悦のマグダラのマリア』(ルーベンス/1625~1628/リール美術館)。新約聖書に登場するマグダラのマリアを描いた絵画。キリスト死後の隠遁生活時に精神的昇天を何度も迎えたと言われる。タイトルの通り絶頂に達している感じがよく描けている。*1
『「噂」に耳を傾けるデイアネイラ』(ルーベンス/1638/サバウダ美術館)。ギリシア神話の英雄ヘーラクレースの妻、デーイアネイラを描いた絵画。デーイアネイラの胸が露出しており、画面右上からの光源に対して乳首にハイライト、左下に乳首の影が描かれていて、めちゃくちゃ気合入ってるなと思いました。
マルスとレア・シルウィア』(ルーベンス/1616~1617/リヒテンシュタイン侯爵家コレクション)。ローマ神話を主題にした絵画。タペストリーの下絵とのことだけれども、ザ・ルーベンスって感じの躍動感にあふれていて、よい。
『ローマの慈愛(キモンとペロ)』ルーベンス/1610~1612/エルミタージュ美術館)。古代ローマの物語を主題にした絵画。牢獄に捕らわれた栄養失調の父のために娘が母乳を吸わせる……って現代の視点から見たらド変態シチュじゃないですか(たぶん、17世紀時点でもド変態シチュだったのではないかと想像するが……)。
『エリクトニオスを発見するケクロプスの娘たち』ルーベンス/1615~1616/リヒテンシュタイン侯爵家コレクション)。ギリシア神話を主題にした絵画。これが今回の目玉の一つかな。大作で、いかにもバロック絵画、いかにもルーベンスという感じで、娘たち、赤ちゃんと蛇、犬、天使、老女、リアルな足の裏、乳房がたくさんついた女神の噴水、左にちらっといる鬼みたいな顔の像と孔雀?……と情報量も多く見応えがあります。
 日本の西洋絵画コレクションは印象派以降の作品が多いように思われ、このようにバロック絵画を集中して見られるのはよい機会だと思いました。また、個人的にルーベンスは好きなので、その点でも楽しめました。

 

buridaikon.hatenablog.com