ぶりだいこんブログ

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国立西洋美術館 常設展

 上野恩賜公園にある国立西洋美術館の常設展を訪れにあたって、展示されている中でも特に著名な画家――具体的にはウェイデン、ティントレット、エル・グレコルーベンス、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール、ムリーリョ、ヤーコプ・ファン・ロイスダールフラゴナールドラクロワジャン=バティスト・カミーユ・コロー、ジャン=フランソワ・ミレー、クールベエドゥアール・マネエドガー・ドガカミーユピサロアルフレッド・シスレーポール・セザンヌ、モネ、ルノワールゴッホゴーギャンピエール・ボナールモーリス・ドニギュスターヴ・モローピカソ藤田嗣治ジャクソン・ポロックの西洋絵画史上の位置づけと、それぞれの絵の特徴を予習した。
 10年以上前に一度訪れた際は、当時のメモから拾うと、「正直、どういう意味のある絵なのかさっぱり解らないものばかりだった」という感想しかなかったものだけれど、改めて予習して臨むと、この常設展は西洋美術史を時系列順に的確に配置した展示であることが、本当によく理解できた。
 ルネサンスから抽象表現主義までの流れが概ねあますところなく揃っている。なにせジャクソン・ポロックまであるのだ。偉いと思う。
 展示ボリュームは印象派に若干偏っている嫌いがあるけれど、コレクションの成り立ちからするとやむを得ないのかもしれない。知られている通り、国立西洋美術館の収蔵品は元勲松方正義の三男で川崎造船所の社長を務めた松方幸次郎がヨーロッパで収集した「松方コレクション」に端を発しているのだが、イギリスで保管していたものは倉庫火災により焼失、日本で保管していたものは世界恐慌後の川崎造船所破綻で売却されてしまった。結果、フランスで保管していたものだけが残り、これが国立西洋美術館の基礎となっているそうだ。

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 実際の展示も歴史の順序通りルネサンス絵画から。

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しばらく足を進めると、急に絵がカラヴァッジオ風になる。バロック絵画コーナーである。個人的には、初期フランドル派からバロック辺りが一番好きな時代だ。

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それから、ロココが続き、

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あれ、ドラクロワ風の絵が登場したなと思ったらロマン主義コーナーである。

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クールベ写実主義に続き、

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印象派の部屋。

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カミーユピサロとか

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 アルフレッド・シスレーを置いてくれているのも嬉しい。

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そして、ポスト印象派

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ナビ派があり、

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その後はだいぶ駆け足だけれど、フォーヴィズムキュビズムシュルレアリスム

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エコール・ド・パリ、

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さらに抽象表現主義と続く。

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 個別の作品について。
『アブラハムとイサクのいる森林風景』(ヤン・ブリューゲル)は、位置づけとしては初期フランドル派の系譜なのだろうが(ピーテル・ブリューゲルの息子なので)、のちのロイスダール風の写実寄りの風景描写で、おやと思わせる。聖書の一場面であることは解説を読まないと自分には分からず、少し時代からはずれたような絵だな、と印象に残った。

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『ピアノを弾く妻イーダ』ヴィルヘルム・ハンマースホイ)は、第一印象は、室内を真正面から描く構図で、画面左から陽光が差し、女性が一人いるので、まるでフェルメールだ。解説には「全体の構図はフェルメールの影響を受けていますが、画面は生活感に乏しく、17世紀オランダの親密な風俗画とは趣が異なります。」とあり、なるほどと思う。

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 全体として、そりゃもちろんルーヴル美術館メトロポリタン美術館みたいなすさまじいボリュームではないけれど、かえって西洋絵画史がコンパクトにまとまっており、これはこれでよい展示だと改めて感じた。1枚1枚をゆっくり見ても、1時間から2時間くらいで済むんじゃないかな(もちろん、人によると思いますが)。ルーヴルやメトロポリタンで1枚1枚見ようと思ったら気が遠くなるでしょう……
 当初由来からしても印象派中心だっただろうコレクションを、過去方面と未来方面に収蔵品の幅を広げていって、ルネサンスから抽象表現主義まで一通りを揃えているところも、日本で西洋絵画史を学ぶ機会を与えようという強い意志を感じられて、好感がもてる。
 絵画の見方は人それぞれで、なんの予備知識もなく一枚の絵に感動するようなことがあれば、もちろん、それはそれで大変素晴らしいことだけれど、本当に入門者向けの本でよいので事前に予習していくと、より一層楽しめるのではないかと思う。自分はこの本を読んだけれど、類書も多数ある。

絵画の見方・楽しみ方―巨匠の代表作でわかる

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  たまたま見かけた馬淵明子館長のインタビューでも似たようなコメントがあった。このインタビューは美術館運営の実務的な話があって面白く読んだ。

馬渕 絵はじっと見れば何か訴えてくるみたいなことを言いますが、訴えてなんかこないですよ(笑)。
 昔、パリに留学していた時に、友達のお母様が観光に来られてルーヴルにお連れしたんです。その方はルーヴルに行けば感動すると思っていたのに、感動しないものだから、すごく当惑された。要するに何が描いてあるかわからないんです。
 やはり、どうやってその絵を見るかというトレーニングがある程度できていないと、おもしろく見られないということはあると思います。特に西洋絵画は、なぜこういう表現になったのか、画家が何をここで描こうとしたのかということが、歴史の中に位置づけられて初めて理解できるところが大きいので。もちろん、見て感動することを、私は全く否定しないし、そういう見方もあるとも思いますが。

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