ぶりだいこんブログ

推理小説とか乃木坂46の話をしています。

『スパイダーマン:スパイダーバース』(ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン/2017)

 アメリカの人気コミック「スパイダーマン」シリーズのアニメ映画化作品。スーパーヒーロースパイダーマンが存在している世界で暮らす高校生マイルス・モラレス。彼はスパイダーマンの戦死を目撃すると共に、突然変異した蜘蛛に噛まれてスパイダーマンと同等の超人的な能力を得る。一方、悪役キングスピンの計画により次元の扉が開き、別宇宙のスパイダーマンたちが次々とこの世界へとやって来る――
 原語キャストはシャメイク・ムーア、ジェイク・ジョンソン、ニコラス・ケイジら。2018年のアカデミー賞長編アニメ映画賞受賞。

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  スパイダーマンのアニメ化ということで勝手に子供向けなのかと思っていたけれど(もちろん、子供が観てもいいように残虐な描写は注意深く取り除かれています)、恐ろしく趣味性が高くで、かつ、完成度も高く、でもやっぱり趣味性が高いので、びっくりした。
 まずオープニングがかっこいい。ていうかその前にコロンビアとかマーベルとかの制作会社のロゴが、作品の内容を暗示するように乱れていくのがかっこいいし、映倫みたいなマークが出るところもかっこいい。あまりにもオープニングがかっこいいので、観終わった観客が反芻できるよう、ソニーピクチャーズさんも公式で公開しているようです。

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 主人公のメンターとなるピーター・B・パーカーが妻に去られた中年太りのスパイダーマンというのも非常にうまいバランスだし、1930年代ハードボイルドコミック調スパイダーマン(当時の雑誌みたく印刷の網点が見える)と、カートゥーン風のスパイダーマンと、日本のアニメっぽいスパイダーマン(日本アニメの引用であることを示す代表的な記号表現って今でも女子高生ルックなんですね、と改めて感じた)が、おなじ画面に違和感を敢えて残しつつ調和して存在しているのも、相当の工夫があったんだろうなと思われる。多次元宇宙というSFネタを、様々な文化のコミックで活躍するスパイダーマンならではの形で描いており、本当にこれしかないという表現だ。
 ちなみに、原作コミックの『スパイダーバース』が2014~2015年に連載されていたと知り、アメリカのコミック界もあれこれやってるんだなと感心した。

 ストーリーは安定というか、ハリウッドお得意のおなじセリフを一度目と二度目で違う意味づけにする演出とか、本当に安定していますね。スタッフロールでストーリー担当が10人以上いるように見えたけど、見間違いかな……

 一点だけいただけなかったのは、2D字幕で観たんだけど、3D用と思われる赤と青の輪郭線が頻繁にちらつくところ。3Dと2Dでおなじフィルムなのだろうか? それとも3Dで観なさいということ?

 ヒップホップやR&B中心のサウンドトラックも趣味性が高いんだよなあ。子供の頃こんなの観たら衝撃受けるよ。

スパイダーマン:スパイダーバース オリジナル・サウンドトラック

スパイダーマン:スパイダーバース オリジナル・サウンドトラック

  • アーティスト: サントラ,ヴィンス・ステイプルズ,デイビット・ビラル,デンゼル・バプティスト,アンドレ・ジョーンズ,ダニエル・シーフ,ディディーアー・コーエン,トレバー・リッチ
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2019/02/27
  • メディア: CD
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 ちなみに、エンドロールでは「スパイダーベル」という、スパイダーマンが人気出過ぎてジングルベルをカバーする羽目になるというギャグシーンが流れるのだけれども、案の定、アメリカでの公開はクリスマスシーズンだったのね。『リメンバー・ミー』の時も感じたけれど、本国と日本での公開時期の差により季節感がズレてしまうの、ちょっと寂しい。

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