ぶりだいこんブログ

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『RRR』(S・S・ラージャマウリ/2022)

『バーフバリ』シリーズで知られるS・S・ラージャマウリ監督の最新作。英国支配下のインドを舞台に、使命をもった二人の男を描くアクション超大作。
 W主演となるのはNTR Jr.とラーム・チャラン。ラーム・チャランは『マガディーラ 勇者転生』(2009)以来のラージャマウリ監督作品出演。他、アーリヤー・バット、レイ・スティーヴンソン、アリソン・ドゥーディら。

 しばらく前にTwitterでダンスシーンだけ流れてきたのを観て、「ラージャマウリ監督だから面白くないってことはないんだろうけど、ストーリーがさっぱり分からないな……」と思った。

 1か月前くらいにYoutubeで予告編を観て、「これは絶対に面白い! と思うが……」と期待と不安に緊張をしていた(絶対に面白いと期待して観に行ってそうでもなかった作品もままあるので)。

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 そして、公開翌日に鑑賞。

 ※ネタバレしています。

 映画開始直後、”R"という文字がスクリーンに登場し、タイトルか!? と思いきや、"R"が強調された"STORY"(発端)というテロップで意表を突かれる。インドの森の中でイギリス人総督夫婦(登場した瞬間に悪役と分かる素晴らしい佇まい)が、森の民の少女マッリを金で買って連れ去り、追いすがる母親を棒で殴り倒す鬼畜の所業。
 再び”R"という文字が現れ、"R"が強調された"FIRE"のテロップ。警察官であるラーマは尋常ならざる膂力をもち、暴動を起こすインド人民衆をたった一人で鎮圧するも、表彰はイギリス人警官に与えられる。悔しさを表現するのにサンドバッグをぶち抜く演出が素晴らしい。そんな折、森の民の少女マッリを連れ去った総督に、地方藩主から警告がある。かの民は必ず刺客を送り込んで少女を奪還に来るだろう、と。ラーマは特別捜査官に昇進するため、刺客逮捕へ名乗りを上げる。なるほど、これはインド人同士が警察と刺客に別れて激突するという話なのか……!?
 みたび"R"の文字が登場して、"WATER"。もう一人の主人公、森の民のビームが刺客として首府デリーへやって来る。マッリ奪還を試みるが、総督府の警備は厳重で到底中に入れない。ある日、橋上で列車が爆発事故を起こした。川中に取り残された子供の命が危ない。偶然出会ったラーマとビームは力を合わせて子供の救出へ向かう。橋を支柱にしてロープでお互いの体重を支え川へ飛び込み、ビームが子供をキャッチ、ラーマへパス。振り子でビームは炎の中へ巻き込まれるが、ラーマが交換に渡した三色旗を身にまとい、難を逃れる。そして、二人ががっちり手を握り、その様子が"R"の文字に刻み込まれ、"RRR"というメインタイトルが現れるのだ!! か、か、か、かっこいい……!! そして、これだけ盛り込んでまだアバンタイトルだったんかい! と突っ込んでしまう。

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 ここでラージャマウリ監督のお約束通り、物語全編を予告するような主題歌と共に、救出劇をきっかけに固く結ばれたラーマとビームの友情が描かれる。ビームがバイクに、ラーマが馬に乗って野原を競争したり、ビームがラーマを肩車したり、こう、なんというか、友情というよりもはやLOVEなのでは? という描写が続くのだけれども、これがなんと後半への伏線になっているのだから驚きだ! 二人は追う者、追われる者でありながら、それにお互い気づかず友情を育んでいく。

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 そしてくだんのダンスシーン。総督府のパーティーに招かれたビームは、イギリス人に「タンゴは踊れるか? スウィングは? フラメンコは?」と馬鹿にされる。ビームだけでなく、周囲で見ていたインド人スタッフやアフリカ系のバンドマンもしゅんとうなだれてしまう(ラージャマウリ監督のこういう描写がとてもいい)。そこに現れたラーマ。バンドマンからスティックを借り、ダンダダダッダッとリズムを刻む。「ナートゥはご存知か?」。ラーマとビームのナートゥダンスは周囲も巻き込んで大盛り上がりに盛り上がるのだった! Twitterで見たダンスシーンはこういう意味だったのか!

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 とうとうビームは総督府に突入に成功する。予告編でも使われている通り、猛獣たちと共にトラックの荷台から飛び出すのだが、この猛獣たちは決して手懐けているわけでなく、時々ビーム自身も襲われているところがいい(笑)。ラーマがビームの正体に気づき、逮捕しにやって来る。燭台を掴み"FIRE"の象徴となるラーマ(パーティー会場が爆発して花火が飛び狂っている演出が素晴らしい)、ホースを掴み”WATER"の象徴となるビーム。二人の闘いは互角だったが、総督が卑怯にもマッリを人質に取り、ビームはやむなく降伏する。屋上から中庭へ飛び移ろうとしたビームを、ラーマが腕一本で捕まえる。腕と腕を握り合うのはメインタイトルシーンとおなじだが、二人の関係性は完全に反転しており、もはや友情は失われてしまったのだった。ラーマの葛藤を表すように額から流れた血がまるで涙のように目元を伝う……

 ここで"INTERRRVAL"(休憩)! めちゃくちゃいいところで続く! "RRR"を強調しているのが小憎らしい!

 後半はラーマの過去が描かれる。少年時代、ラーマはイギリス兵に村を焼かれていた。反英闘士だったラーマの父は、自分を犠牲にして村を守った。その意志を受け継ぎ、反抗組織へ武器を横流しするため、ラーマは警察へ潜入し、昇進を目指していたのだった。
 総督は見せしめのため、ビームへ公開の鞭打ちを処する。実行を命じられてのは特別捜査官になったラーマだった(細かいんですが、ビームの鞭打ち見物に人々が集まってくる前振りとして、馬に乗った役人がインド人たちに触れて回る場面をワンクッション入れるのが、よい)。葛藤を抱きながら鞭を振るうラーマ。ビームは拷問に屈することなく歌を歌い、見物していた民衆もやがて抗議のために立ち上がった。武器でなく歌で大衆を動かしたビームに、彼にこその自分の使命を託すべきだとラーマは考える。ビーム処刑の日、ラーマは総督を裏切って少女マッリを逃す。追っ手を食い止めたラーマを、しかし、裏切り者と信じているビームは返り討ちにしてしまう。逃亡先でラーマの婚約者シータと出会ったビームは、ラーマの真の目的を知り、ラーマ救出を決意する。
 ラーマは刑務所の地下の竪穴に閉じ込められていた。ラーマを探すため、ビームはダンスシーンでラーマが叩いたダンダダダッダッというリズムを合図にする(伏線の回収!)。ラーマを探し出したビームは彼を引っ張り上げる。腕と腕で握り合う場面を、友情→破局→友情の復活、と反転反転で象徴させるお話づくりが本当にうまい。拷問で膝を痛めたラーマを、ビームは肩車で運び出す。肩車がこんなところで効いてきた! 上半身最強のラーマはジョン・ウーばりの二丁拳銃(拳銃じゃないけど)で次々とイギリス兵を打ち倒す。
 森に逃げ込んだ二人は追っ手を返り討ちにする。そして、馬とバイクに乗り、最後の戦いに挑むのだった――

 アクションは一見荒唐無稽だが、実はきっちりと導線を張っているので、意表は突かれるが不自然でない。そして、アクションシーンのすべてにフレッシュなアイディアがふんだんに盛り込まれており、まったく飽きさせない。

 強いて欠点は、序盤、話が始まるまでやや冗長なのと、これは日本の興行の話だけど、"INTERRRVAL"で実際には休憩時間がなく、すぐさま後半が始まってしまうところ。絶対幕間に「ラーマとビームが敵対しちゃったよ、これからどうなるんだろう……!?」って語り合いたいじゃないですか。あと、ラーマとビームに強烈にスポットを当てているので、『バーフバリ』のカッタッパやクマラのような魅力的な脇役がいないのが寂しいといえば寂しい。

 とはいえ、胸が熱くなるストーリーに驚愕のアクション、3時間をまったく退屈させない名場面につぐ名場面で期待を微塵も裏切らない、最高に面白い映画でした! PERRRFECTだ!

 

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