ぶりだいこんブログ

推理小説とか乃木坂46の話をしています。

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(ライアン・ジョンソン/2017)

 2015年より始まった「スター・ウォーズ」新シリーズの第2弾。前作『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』にてまさにフォースを覚醒させたレイや、元敵国兵のフィン、ダースベイダーの後継者カイロ・レンの他、旧シリーズのルーク・スカイウォーカーレイア姫、チューバッカらも登場し、銀河の支配を目論む集団「ファースト・オーダー」と反乱軍の戦いを描く。監督は『LOOPER/ルーパー』のライアン・ジョンソンが抜擢の形で担当する。

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ネタバレしてます。


 キャラクターの立て方はさすがに上手だなと思います。BB-8とかチューバッカはとても可愛い。BB-8がポーと再会のハグをする場面は可愛いし、チューバッカが島の鳥みたいなのにイジられてるのも可愛い。それから、ルークはちゃんとライトセーバーで戦う場面があるし、レイアも宇宙空間に放り出されたあとフォースの力で戻ってくるとか、まあ、そこはちょっとどうでもいいかもしれないけど、反乱を起こしたポーを鎮圧するとかキャラ立ちする場面が多い。もちろん、レイとカイロ・レンが共闘する場面は燃えるし(このまま手を組んで、レイがファーストオーダーに行っても、カイロ・レンがファーストオーダーを出て行っでも、斬新だったけどな)、フィンもレイ大好きで脱走するところは、まあ、そこはどうでもいいかもしれないけど、キャプテン・ファズマと対決する場面もあって、よかった。
 というわけで、キャラクター的な見どころは、たくさんあって、楽しめた。
 でも、長い。
 塩の星に到着する辺りでそろそろ終わりかな、と思ったよね? でも、そこからまだ続く(体感的には塩の星に到着する辺りで2時間)。長くて意味があるならよいけど、例えば、フィンとローズがカジノの星に行くくだりとか必要ありましたかね? このエピソードの幕切れに至り(ハッカーみたいな男がさくっと裏切る……別に伏線も回収もなく)、「え、このくだりなんだったの!?」と思った。
 いや、分かるんです。フィンとローズを活躍させる場面を入れたかった。それは分かる。実際活躍してたし。でも、だったらもうちょっと話の作り方あるじゃないですか。まあ、「スター・ウォーズ」って銀河史的に割とどうでもよさそうな感じのエピソードを入れがちだし、それが持ち味だとは思いますが、にしても、例えば、『帝国の逆襲』冒頭のルークがイエティみたいな奴に襲われるエピソードがあるじゃないですか。あれも、観た時は「のっけからどうでもいい話だな。早くストーリー進めろよ」と思ったが、一応、あれでストーリーは進むんですよね。
『最後のジェダイ』はカジノの星が典型だけど、全般的に「マンガ原作アニメの、原作マンガの連載に追いつきそうだから無理やり埋めたオリジナルエピソード」のような印象を受けた。なんにも話が展開しないんだ。『フォースの覚醒』はもっと「なにが起こるんだろう」とわくわくしたような印象があるけれど、それは新キャラボーナスなのか、J・J・エイブラムスの手腕なのか、それとも記憶が単に美化されているのか……

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スター・ウォーズ/最後のジェダイ  オリジナル・サウンドトラック

スター・ウォーズ/最後のジェダイ オリジナル・サウンドトラック

 

 

映像の叙述トリック特集(乃木坂46編)

 叙述トリックとは推理小説の技法の一つで、読者に対して人物や時系列等を誤認させるトリックである。アリバイトリックや密室トリック等が、犯人が捜査陣に対して仕掛けるトリックであるのに対して、叙述トリックは作者が読者に仕掛けるトリックというのが特徴である。ニコニコ大百科が比較的充実しており、また、短いながら実作例もあり理解しやすい。

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 ニコニコ大百科の記述の通り、叙述トリックは小説での作例が圧倒的に多い。というのは、小説というメディア自体が、情報量が少なく読者の想像力に委ねる部分が多い。叙述トリックはそれを逆手に取る。映像があると人物や時系列を誤認させるのは難しくなる。
 しかしながら、映像作品でも作例がないわけでなく、むしろ小説ではできない映像ならではの叙述トリックもある。以下、ネタバレです。

"Someday"(Nickelback/2003)

 カナダのロックバンド、ニッケルバックの2003年のシングル"Someday"のミュージックビデオである。まずはご覧いただきたい。

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 叙述トリックの作例です、と前置きしているので推理小説ファンなら概ね途中でネタ割れすると思う*1。トリックのネタとしては、1999年の著名なホラー映画作品とおなじだろう*2
 ニッケルバックのトリックは小説でも作例がある。では、映像でしかできないような叙述トリックというのがないものか、というと、ここで乃木坂46が出てくる。


『超能力研究部の3人』(山下敦弘/2014)

 乃木坂46は2011年から活動している日本の女性アイドルグループである。ミステリとは無縁の存在に近いけれども*3、出演している映像作品に叙述トリックの作例が少なくない。尖った映像作品を大量に作りたい(しかし、予算はあまりかけられない)というグループの方針(もしくは総合プロデューサーである秋元康の意向)と関係あるのかもしれない。
『超能力研究部の3人』は山下敦弘監督による2014年の映画だ。乃木坂46初の主演映画という触れ込みで、メンバーの内、生田絵梨花橋本奈々未秋元真夏の三名が出演している。大橋裕之のマンガ『シティライツ』の一編を原作に、「超能力研究部」という部活動に所属する三人の女子高校生たちが同級生である宇宙人を宇宙へ帰そうとするドラマパートと、初主演に臨む乃木坂46の三名の奮闘を描くメイキングパートが交互に進む、少々変わった構成となっている。

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 メイキングパートでは、乃木坂46のメンバーが監督の演技指導に涙したり、撮影現場で偶然学友と会ったり、メンバー同士で喧嘩をしたり仲直りしたりしながら、撮影を進めていく。
 ところが、ドラマパートもメイキングパートもすべて終わりスタッフロールが始まると、驚くべき事実が判明する。スタッフロールで示される通り、メイキングパートで出演していた撮影スタッフはみんな役者だった。つまり、メイキングパートの涙も再会も喧嘩も仲直りもすべて作り話だったのだ。
 乃木坂46の映画初主演という製作背景自体をトリックに利用しており(従って、メイキングパートがあるのもさほど不自然ではない)、非常にクレバーだと思う。自分の知る限り映画でも推理小説でも類例がなく斬新な叙述トリックだと膝を打ったのだが、制作陣はその点をアピールしておらず、出演したメンバーがむしろ積極的にネタバラシをしているくらいので*4、もしかしたら自分が間違った観方をしているのかもしれない……
 ちなみに本作はHuluでも視聴可能である。

 

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「全力女優だまし」(中川英明、塚本祐介/2016)

 乃木坂46にはシングルに「個人PV」という特典映像の付くことがある。各メンバーに若手の映像作家を付け、数分程度のプロモーションビデオを撮影、収録している。方向性は様々なのだが、その中から個人仕事に発展するケースもある。最近では17thシングル「インフルエンサー」の特典映像だった伊藤万理華の「伊藤まりかっと」が話題になり、それがそのままヘアサロンアプリのコマーシャルでも使われるようになった。

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 今回取り上げたいのは、14thシングル「ハルジオンが咲く頃」の特典映像の一つ、川後陽菜の個人PV「全力女優だまし」(中川英明、塚本祐介)。ウェブでは予告編のみで、本編はシングルCD初回限定版Type-C付属のDVDでのみ鑑賞可能である。

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 川後陽菜が保険会社のCMタレントとして採用され、撮影をするも、最後にドッキリだったことが明かされる。予告編はここまで。本編では実際に嘘CM撮影風景が描かれるのだが、ラスト、川後が初めから「ドッキリを仕掛けられた体」で全編を演じていたことが明かされる。騙されていたのは演者でなく視聴者だったのだ。冒頭の「この映像は川後陽菜の女優力が試される企画である。」、「最後まで騙し通せるか。」というテロップも、最後に意味が反転するところが、素晴らしい(撮影した保険会社の嘘CMをおまけで流すところも洒落ている)。
 ちなみに、おなじ14thシングルの特典で渡辺みり愛の個人PV「わたしのみかた」(タナカシンゴ)、若月佑美の「彼女の思い出」(山田篤宏)も叙述トリックが使われており、えらく叙述トリックに寄った映像集となっている。が、「わたしのみかた」は実は主人公が幽霊だったネタ、「彼女の思い出」は恋人かと思ったら親子だったネタで*5、映像ならではというわけでない。叙述トリックへの奉仕という点で「全力女優だまし」をより評価する。

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『超能力研究部の3人』と「全力女優だまし」が映像ならではの叙述トリックとして光るのは、それぞれ「メイキング」、「ドッキリ」という、それ自体が映像ならではの技法に依拠しているからだと思う。

 

映画 超能力研究部の3人 公式ブック (講談社 MOOK)

映画 超能力研究部の3人 公式ブック (講談社 MOOK)

 

 

 

ハルジオンが咲く頃(Type-C)(DVD付)

ハルジオンが咲く頃(Type-C)(DVD付)

 

 

*1:一応書いておくと、主人公の男は突然飛び出していった恋人を追いかけるのだが、実は恋人は主人公の死を新聞記事で知り飛び出して行っており、主人公は既に幽霊になっていた、というオチ。

*2:両作共主人公自身が幽霊であることを認識しておらず、主人公が作中で事態に気づくことが解決編という構成のため(読者だけでなく主人公もミスリードされているため)、純粋な意味での叙述トリックではないかもしれない。

*3:齋藤飛鳥高山一実など個人としてミステリを愛好しているメンバーはいるが。

*4:http://blog.nogizaka46.com/manatsu.akimoto/2014/12/021891.php

*5:あくまで個人的にだが、本作は少し気持ち悪く感じる。1992年に発表された新本格派の推理小説作品が類似のネタで暗に取り上げた親子関係の不気味さを、本作では綺麗に捨象してしまっているからかもしれない。

『HiGH&LOW THE MOVIE3/FINAL MISSION』(久保茂昭、中茎強/2017)

 EXILE HIROが企画プロデュースするアクション映画シリーズの第4弾。5つのチームが抗争を繰り広げる「SWORD地区」。そのSWORD地区の利権を狙う暴力団九龍グループ。前作『HiGH&LOW THE MOVIE2/END OF SKY』で決定的な対決姿勢を見せたSWORDに対し、九龍グループが容赦なく牙をむく。カジノ建設構想、公害の隠蔽など政府の思惑も絡み、物語はクライマックスを迎える。主演は三代目J Soul Brothersの岩田剛典。EXILE TRIBEメンバーのAKIRA、TAKAHIRO、登坂広臣の他、若手俳優窪田正孝山田裕貴林遣都、さらには岩城滉一津川雅彦らベテラン俳優も出演する。

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 初めに悪かったところ、次によかったところを書きたい(ネタバレしてます)。

 

悪かったところ

 一番気になったのは、ストーリー展開がよく分からないところだ。これは枚挙に暇がないけれど、

  • コブラが捕まってから琥珀が助けに来るまでのどれくらい経っているのか。
  • コブラがなぜスモーキーの危機を知っていたのか。
  • スモーキーの死後、無名街からMUGENの溜まり場へいつの間に移ったのか。
  • コブラやララが収容所へ行く場面の意味がない。
  • ドラマシリーズから引っ張ってきた割にMIGHTY WARRIORSの見せ場がない。

 などなど。元よりプロットの巧みさで見せるタイプの映画シリーズではないが、前作『THE MOVIE2』では「汚職情報が格納されたUSBメモリを巡るバトル」と「DOUBTとWhite Rascalsのバトル」の2つに話の焦点を絞っていたのが奏功していた。にも関わらず、本作では脚本作りが後退してストーリーが若干散漫になっていたように思う。
 また、これまでの映画シリーズでは物語上のクライマックスとアクション上のクライマックスを一体化させ、映画の終盤にクオリティの高いアクション場面を見せてくれていたが、本作で、もちろん、アクション上の見せ場はいくつもあるのだけれど、ラストに最もよいアクションシーンを置いているとは言いづらかった。一応、シリーズの完結編なのでお話の決着をつけなければいけないという点は理解するが、シリーズを見てきたものからすると、映画の終盤に大乱闘シーンがないのは物足りない。
 それから、これは本作に限った傾向でないけれども、登場人物がテーマをセリフで説明し過ぎてしまっていて、少々鈍重に感じる。YOUと小泉今日子のくだりとか、完全に蛇足じゃなかったですか? 完結編だから登場させたかったのは分かるけれけれども、パチンコへ行くだけでよかった……

 

2回観ることの効用

 本作は映画館で2回観たのだけれども、巷で言われている通り、2回目の方が楽しく観れらた! これは、1回目はやはり話の筋を追ってしまうため、前述の通りストーリー展開上の粗が気になってしまうけれど、2回目はストーリーがもう頭に入っているのでそれ以外の場面――それが後述の通りナイスな場面なわけで、そちらに集中できるのでかえって楽しめるからだ、と思った(『HiGH&LOW』に限らず、ストーリーは変だが絵作りやキャラクターがよい映画はおなじ観方ができるんだろうけれども、大抵はストーリーが駄目なら絵作りも駄目か、ストーリーも絵作りもよいか、だと思う。『HiGH&LOW』みたいなバランスが変な映画は多数派ではないのだろう)。
 というわけで、よかったところ。

 

よかったところ

 琥珀、九十九、雨宮兄弟が西郷のアジトから脱出する場面のアクションはとてもよかった。床をぶち破ったり、穴を通ったり、はたまた吹き抜けで上のフロアへ戻ったり、カメラが上下を自在に移動しつつ大人数の乱闘をワンカットで撮っているのは、痺れる。ほんと、どうやって撮ってるんだろう。
 ワンカットといえば、アクションじゃないワンカットもあって、例えば、無名街でキリンジと植野が話す場面もワンカットなのである。アクションシーンでないとはいえ細かい動きがちりばめられていて、注視しているとなかなか面白い。
 美術、ロケーションは映画シリーズを通してよい。本作のメインの舞台となる「無名街」のもはや究めた感すらあるスラム描写を始め、ちょっとだけ出てくる「リトルアジア」なんかもよい(「共用廊下で山羊を飼っているとアジアっぽい」という発想に脱帽)。スモーキーの墓もすごい。よくあんな絵になる倉庫を見つけたものだ。『ファイナルファンタジーⅦ』のエアリスの礼拝堂みたいなんだけど、たぶん、美術スタッフはそっくりそのままの指示で作っていると思われる(笑)。あと、終盤で達磨一家が川の向こうに陣取る九龍グループに突入する場面、あれ、撮影場所日本なんですかね? 海外っぽかったけど。それともCGで作ったのかな。
 みんなで見栄を決めているカットで、かかってほしいタイミングでかかる主題歌「HIGHER GROUND」もよい。やはりテンションが上がる。

 

 

乃木坂46中元日芽香さんの卒業に寄せて

 中元日芽香さんは、推しメン、ではない。
 ただ、ずっと引っかかる存在、ではあった。
 レギュラーだった「らじらー!サンデー」(NHKラジオ第1)の2015年9月6日の回――この頃、中元さんは乃木坂46の選抜からもう2年近く遠ざかっていた。クラシカルなアイドルを追求しつつ選抜に選ばれないという状況について、MCであるお笑いコンビオリエンタルラジオ中田敦彦、藤森慎吾と次のように話している。

中田 どうしたら選抜なれるの? ざっくりとした質問だけど。どうしたら選抜ってなれるものなの?
藤森 確かに分からんね、これは。
中田 なろうぜ、応援しようぜって言ってる我々だけれども、なにをしたらいいのかっていうのをね。
藤森 ひめたんが一番大変だと思うけども。
中田 なんか思うところはある? これをがんばれば選抜に近づけるんじゃなかろうか、みたいな。
中元 うーん、なんだろう……
中田 爆発的にお客さんからのリアクションがよくなったらいくとか、ってのもある?
中元 もちろん、それは一つの審査対象、じゃないですけど……
中田 急に花開く子とかっているの?
中元 見てて、あ、すごい、最近、この子来てるなとか、そういうのはありますけど……
中田 あるわけでしょ。
中元 そうなるのは難しいので。
中田 めちゃめちゃネガティブ(笑)。
藤森 ひめたん! ……でも、ほら、ツインテールやめてさ、新たにっていうことでしょ?
中元 そうですね。ツインテールは選抜発表より前に私が勝手に決めたことなんですけど、なんか違うのもいいなって思ってやってみて、みたいな。
中田 なんか掴みたいよね。

 

中元 裏側をあんまり見せないことが、あたしのアイドルの美学としては綺麗なのかなというか。アイドルは憧れの存在であってほしくて。あたしの中で。もう、手が届かない存在みたいな。
中田 だから、アイドル像のビジョンがはっきりしてるんだ。アイドル好きだから。そういうアイドルになりたいっていう。
中元 完成された理想像みたいなものがあって、今までそれに近づくようにいろいろやってたんですけど。ツインテール、とか。ほんとにツインテールが好きだったりピンクが好きだったりってのも、もちろん、あるんですよ。なんですけど、ここに来て、なんかちょっと……もう分かんなくなっちゃいました、自分でも。
中田 もうワンステージ上がるために、このままでいいのかってのもあるから……でもさ、アイドルが好きで、これこそがアイドルだってビジョンがあるのってすごいよね。
藤森 確かにね。裏は見せないって徹底して意志があったんだね、元々ね。

 ちなみに、この回のゲストで登場したメンバーの高山一実さんが、乃木坂46の中では中元さんを推しているという話をしている。理想のアイドルを追求するも選抜になれない中元さんと、そうはなれないからこそ中元さんを推す選抜の高山さん、という意図せぬ対比を興味深く感じた。

藤森 元々どうなの? 二人の関係性は。
中田 どういう感じなの? 距離感は。
中元 そうですね、おなじ一期生で、かずみんは3つ上なんでお姉ちゃんみたいな感じなんですけど。
藤森 かずみんの方が上なんだ。
高山 そうなんですよ。私、元々アイドルが好きで、乃木坂の中でも推しメンにするなら、ひめたん、って言ってるくらい、可愛いんです。
中元 言ってくれてるんですよ。
中田 俺が訊きたいのは、高山さんがどこを推してるの? どこがいいんだって。
高山 ほんとにキャラとかじゃなくて普段からザ・アイドルって感じで、ピンクが好きだったり、リボンが好きだったり。あたし、モーニング娘。さんの道重さゆみさんのファンだったんですよ、ずっと。
中田 アイドル性高いもんね。
高山 そうなんですよ。で、ひめたんもピンクって感じで。そういう子が好きなんですよ。
藤森 確かにね。
中田 そうかあ。やっぱりアイドル好きは、パーフェクトスーパーアイドルを好きになるし、高山さんもそうなわけだ。ひめたんもそうだし、それに向いてるからそれを追求してきたわけだよね。
中元 そうですそうです。
中田 そうなんだ!
藤森 だって、高山さん、好きなんだけど、そういう感じでもないしね。
中田 だって、道重さん、ポジピースって感じでもないもんね。
高山 そうなんですよ。それがすごくショックなんですけど。
中田 ショックなんだ(笑)。自分は自分でね、このやり方でいくんだと。でも、そうじゃない道をひめたんがいってるわけだから、ある意味憧れでもあるんだ。
高山 リスペクトです、ほんとに。
中田 それは面白い関係だ。

 

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 その後、半年ほど経過した2016年3月27日の「らじらー! サンデー」で、変わらず選抜になれていないことについて、オリエンタルラジオから質問を受けている。

中田 どうなんですか? なれそう?
藤森 ぶっちゃけ。
中元 え? うー……
中田 言っちゃってもいいと思うよ。
藤森 言っちゃってよ。
中田 実感としてどうなんですかね?
中元 実感ですか? いや、実感はまだすごい遠い存在ではありますけど……
中田 たってさ、アンダーのセンターなわけだよ。
中元 そうです。
中田 もう一枚上っていう感じなんじゃないの?
中元 その一枚が分厚いんですよー。
中田 分厚くきたわけだ。
中元 でも、皆さんが本気で福神になろうぜ、頑張ろうぜって言ってくださる。らじらーのおかげで、言ってくださる方もすごく増えて。期待をしてくださってるなら私も頑張らねばっていう。一年前よりも思ってます。
中田 そうだね。遠いなとか私なんかがって言ってちゃいけない存在になってきたのかもしれないよね。
中元 そうなんですかね……
藤森 こっちも現実味を感じているもん。見たいし、その喜びをやっぱ一緒に味わいたいな。
中元 あ~。頑張ります!
中田 だって、すごいストーリーがあるもんね、アンダーのセンターって存在にはさ。それが福神になったら、それはやっぱ醍醐味だよね。

 やはり歯切れは悪い。この回にゲストとして出演したメンバーの橋本奈々未さんが、東京ガールズコレクションのランウェイを歩いた時の感想を訊かれ、少し視点をずらして軽妙な切り返しをしたのとは対照的かもしれない。

中田 「……そういえば、ななみんとオリラジさんはつい最近東京ガールズコレクションでランウェイを歩いたんですよね。僕はランウェイを歩いたことがないので、歩くとどのように感じるのか分かりません。感想を教えてもらえませんか?」
中元 ランウェイどうでした?
藤森 僕らファッションショーじゃないから。
中田 でも、僕ら歌ったあとに一応一回歩かせてもらいましたけどね。
橋本 見てました。
中田 あ、見ててくれたんだ。
橋本 見てました、横から。関係者の方がほんとにみんな見たがって、ぱんぱんになりながらうしろから見てました。
中田 嬉しい。
藤森 盛り上がってました?
橋本 めっちゃ盛り上がってました。
中田 よかった。
橋本 出てきた時に「わー!」ってなってて。すごいな、一世を風靡してるなって。
中田 一世を風靡してるなって思ったんだ(笑)。なかなか言われないけどね。
藤森 楽屋にもメンバーみんなで来てくれて。写真撮らせてもらっちゃったりなんかして。
中田 あれ出てる時、どういう気分で歩いてるんですか? ななみんは。
橋本 何年か前からこういうファッションイベントのランウェイ歩かせてもらってるんですけど、何回歩いてもやっぱり女の子の目が強烈に突き刺さる感じ。
中田 ああいうファッションショーって女の子が女の子に「きゃー!」って言う会場だもんね。
橋本 あれがすごく厳しい目を向けられてる気がするんです。
中田 あ、厳しい目で見られてると思うんだ。
橋本 はい。普段のライブとかのステージでは男の方が割と好意的な目で見てくれるんですけど、ランウェイでは「どんなもんじゃ」みたいな感じで見てくれてて。
中田 「ちゃんとモデルやってんの?」みたいな。「おしゃれしてんの?」みたいな。「着こなせてんの?」みたいな。
藤森 いや、そんなに厳しくないですよ。
中田 「歩けてんの?」みたいな。
藤森 歩けてるよ!
中田 そうやってみんな見てくるわけだ。
橋本 そんな風に感じちゃって。ほんとはもっと好意的なのかもしれないですけど、試されてる感がすごくて。でも、最近になってようやく乃木坂っていうものが知ってもらうことがだんだん増えてきたのか、「わー!」って言ってくれる人が増えてきて。

 

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  その後、中元さんは2016年7月の15thシングルで悲願の選抜復帰となったわけだが、中元さんの中で自分のキャラクターの客観視みたいなのはそれより前から徐々に行われていたようで、2015年11月8日の「乃木坂工事中」(テレビ東京系列)で、井上小百合さんと伊藤万理華さんから富山旅行に誘われなかったというエピソードが披露されていた。これが、中元さんの悲壮感というか、生真面目な優等生タイプのキャラクターというか、性格がちょっとめんどくさい感じなのを、自ら笑いに転化した、なかなか愉快な回だった。たぶん、中元さんが自ら笑いを組み立てて取りに行った初めての回だと思う。
 中元さんの笑いの切れ味が最もよかったのは、2016年6月10日~12日の「乃木坂46時間テレビ」で、先述のエピソードを踏まえた通称「わだかまり温泉」ロケをした時の思い出話をする場面だった。ロケ内で一緒に購入したぬいぐるみを井上さんと伊藤さんは今どうしているかという話で、これは完全にコントなんだけど、バナナマンオリエンタルラジオといった芸人なしでちゃんとコントを成立させていて、すごいと思った。
 個人的には中元さんの歌唱が結構好きだった。乃木坂46の歌唱はユニゾンがメインなので乃木坂46としての楽曲でソロはあまり多くなく、むしろ時々あるカラオケ企画の方が持ち味を発揮していた。当代一うまいというわけではないが、ストレートな歌唱と、「世界でいちばん熱い夏」(PRINCESS PRINCESS)や「翼の折れたエンジェル」(中村あゆみ)といった選曲がよかった。「世界でいちばん熱い夏」のカバーは、Huluで、「NOGIBINGO!」シーズン5#8の中で観られる(14:14~)。

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「のぎ天 #45 乃木團台湾ライブ密着(後半戦)」より

 乃木坂46内ユニット「乃木團」でも能條愛未さんとのダブルボーカルを担当していて、それもよかった。乃木團で好きなのは乃木坂46デビューシングル「ぐるぐるカーテン」のセルフカバー(バンドバージョン)。「楽天TV」の「のぎ天」#45の乃木團台湾公演回で観られる(登録不要で再生可能。11:45~)。

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 中元さんといえばオリエンタルラジオだけれども、中元さんが選抜復帰したのとRADIO FISHがブレイクしたのが似たような時期だったのもいいタイミングだった。「ミュージックステーション」で共演した際、ステージへ移動する乃木坂46に対して、藤森さんが「ひめたんがんばれ! ひめたんがんばれ!」ってなぜか2回繰り返していたのも面白かった*1
 先日2017年11月19日の「乃木坂工事中」で、バナナマンが卒業の餞別にと中元さんへお惣菜のミートボールを渡したのは、本当に洒落ているなと思った。4年前に「乃木坂ってどこ?」で中元さんがごはんのおかずはミートボールという話をした時、バナナマンがノリだけで「ひめたんの隠しミートボール」と節をつけて切り返したというだけのネタで、ファンにとっては印象的なフレーズだけれども、バナナマンも中元さんもちゃんと覚えていたのがよかった。

 

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松村沙友里の『推しどこ』』所収#114「乃木坂46 No.1食いしん坊は誰だ!?」より

 

blog.nogizaka46.com

*1:「らじらー! サンデー」2016年7月31日より
中田 確かにね、藤森がね、「ひめたんがんばれ! ひめたんがんばれ!」って言うもんだから、俺、気遣って、「生駒も、がんばれ」(笑)。慌てて言ったのよ。いや、「ひめたんも行け、生駒もがんばれよー」でいいのにさ、「ひめたんがんばれ! ひめたんがんばれ!」。
藤森 プランがあって。
中田 なんのプランなの。
藤森 俺も帰ってから……俺も結構やっぱ緊張感あったし、高揚感あったんだけど、「ひめたんがんばれ! 生駒もがんばれ!」って言ったあとに、小っちゃい声で「いくちゃんもがんばれ!」みたいのを言おうと思ったら、興奮して二度「ひめたん」って言っちゃった(笑)。二回目は「いくちゃんもがんばってね」っていう、ちょっとこう……
中田 軽オチをつけようとしたんだ。

『返校 Detention』と「雨夜花」

 昨日取り上げた台湾のホラーゲーム『返校 Detention』だけど、なんということなしに関連する動画をYoutubeで眺めていた。
 一つ目はこれ。中視新聞台という台湾のテレビ局の2017年2月8日付けのニュースである。

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 詳細はよく分からないが、恐らく、『返校』の予告編撮影地である台中市の廃校に、ファンが無断で潜入して予告編を実写再現しようとした、という事件のようだ。どこでもこういうのはあるよね!
 もう一つはこれ。三立新聞台という、これまた台湾のテレビ局の2017年2月26日付けのニュース(ちなみに、この動画、中国語ではありますがストーリーのネタバレをしているのでご注意)。

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 こちらも、先日紹介したのと同様、『返校』を製作したRed Candle Games(赤燭遊戲)を取材しているのだが、彼らが製作時に台湾の民俗的な要素を出すのに注力したというくだりの中で、次のような説明がある(動画の4:00頃から)。
 ※以下、ゲーム本編のネタバレ一部あり。
 上段はニュース動画のテロップを、下段はそれをGoogle翻訳にかけてわずかに加工したもの(ただ、変に訳さずとも、動画を通しで観ていれば意味は概ね通じると思われる)。

 遊戲裡的配樂也巧妙融入台灣元素
 在緊張的氛圍裡透著熟悉
 像學校老收音機
 不斷傳來的雨夜花

 The game's soundtrack also cleverly integrated into Taiwan elements.
 In the intense atmosphere reveals through familiar
 Like a school old radio
 「雨夜花」 continues to come

 
 このくだりを観ていてちょっと驚いた。このメロディ、台湾人ならみんな知っているというのだ。
 ゲーム本編をプレイしていた時、このピアノを弾くところがやけに難しかったのは覚えている。というのは、ラジオで流れているメロディ――9つの音符で構成されている――を覚えて、画面の鍵盤に向かって自分で弾かなければいけないからだ。単純に、メロディを耳で聴きとって鍵盤に落とし込むのが難しい。謎解きのキーというだけならもう少し短いメロディにすればよいのになあ、と思っていたが、なんのことはない、台湾人はこのメロディを一から覚える必要がないのだった。
「雨夜花」はウィキペディアの中国語版にあらましが書いてある。日本統治時代の楽曲らしい。

雨夜花 - 维基百科,自由的百科全书

 テレサ・テンが中国語と日本語の両方でカバーしている動画があった。

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雨夜花(ウーヤーホエ)

雨夜花(ウーヤーホエ)

 

 

『返校 Detention』(Red Candle Games/2017)

『返校 Detention』は台湾のゲームデベロッパーRed Candle Gamesによって製作され、ゲームプラットフォームSteamで配信されているPCゲーム。

store.steampowered.com
 2017年1月に英語版、中国語版がリリースされ、日本でも下記のような記事で話題になっていた。

news.denfaminicogamer.jp

 10月に日本語版がリリースされたため、購入してみた。定価は1,180円だが、自分が購入した際はハロウィーンセールとかで半額の590円になっていた。

 舞台は1960年代の台湾。台風で高校に取り残されたウェイとレイは助けを求めて校内をさまよう内に、この世ならざるものたちが跋扈し始めていることに気づく。

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 昔のジャンルでいうと、アドベンチャーゲーム、になるだろうか。2D水平位置の画面で、マウスを動かすことで主人公を左右に移動させる。また、アイテムを見つけ、そのアイテムを使って進路を切り開いていくような形式となっている。途中、「幽霊」と呼ばれる存在が主人公を襲ってくるが、これを倒すことはできず、かわすことしかできない。

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 自分はこの手のゲームに不慣れなため、いくつかの謎解きで時間を要してしまったが(例えば、「シンナー」の使い方」とか)、トータルのプレイ時間は3時間程度だっただろうか。
 ストーリーは、前半は前述の通り、幽霊をかわしつつ学校を脱出するための手掛かりを集めていくという枠組みだが、あるポイントから雰囲気が変わる(ラジオが登場するあたりから)。最終的には主人公の少女レイの内面世界に話になってしまい、は小さくまとまってしまったな、という印象である。『ママレードボーイ』かよ! と個人的には思った。ゲーム的にも一方通行な展開になってしまい少々味気ない。
 日本人にあまりなじみのない、台湾独特の化け物が登場して、それが新鮮、エキゾチックで楽しめた。また、コンパクトなプレイ時間も大人にとってはかえってありがたい。戒厳令下での白色テロを物語の背景としている点も、踏み込んでいてよかった(作中では「総統像」として暗示的に言及されているが、もちろん、蒋介石が台湾を統治していた時代である)。
 ちなみに、本作について調べている際、台湾のテレビ局「壹電視」の下記番組を見つけた。

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 Red Candle Gamesの製作風景や実況プレイヤーを取材していたりして、なかなか興味深い。また、『雨港基隆』という、二・二八事件を主題にした美少女ゲームも取り上げられており、そちらもすごい取り合わせというか、攻めてるなあと感心した。『雨港基隆』は二・二八事の基隆市を舞台にしているようだが、さらに関連する「澎湖七一三事件」というのも取り上げているらしい。この澎湖七一三事件は日本語での情報がなかなか見当たらなかった。

 

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『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(アンディ・ムスキエティ/2017)

 アメリカの作家スティーヴン・キングのホラー小説『IT』を映画化した作品。メイン州のデリーという架空の町で、下水道に隠れて子供たちを捕食するピエロ姿の怪物ペニーワイズとの戦いを描く。原作は子供時代と大人時代がカットバック形式で交互に描かれ、双方のパートからペニーワイズの核心に迫っていく構成となっているが、本映画では子供時代編のみを抜粋して再構成している。それに伴い舞台も1950年代から1980年代へとシフトしている。

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 かつて原作を読んだ時、大雨の中、少年が紙の船を追いかけていくと側溝の中からピエロが声をかけてくる場面や、洗面所の排水溝から大量の血が噴き出してくる場面、子供時代編のラストにあたる川べりで血の誓いをする場面などは鮮烈な印象を受けたものだが、そういった場面がきちんとしたビジュアルで映像化されているところは、感動した。
 キャスティングもよくて、だいたい、アメリカのこの手の映像作品(『グーニーズ』とか『SUPER8/スーパーエイト』とか『ストレンジャー・シングス』とか)というのはいつも「いい顔」の子らをキャスティングするものだが、本作もご多分に漏れず"the Losers Club"にふさわしい面構えのキャスティングになっている。
 劇伴は、いい音楽風に見せかけて安心させておきながら、おもむろに不協和音に切り替わって恐怖場面を予告する、という小技の効いた演出をしている(笑)。
 一方、『IT』ってこんな話だったっけ? という印象も正直なところあり、大人時代編がばっさりとカットされている故の違和感を除いてもなお、少し物足りないように感じた。
 プロットに特段の瑕疵はない。翻訳で文庫全4巻という長大な原作を2時間程度にまとめるにあたり、各キャラクターの個性を手際よく描き、先述した原作におけるビジュアル的に「いい場面」もちゃんとピックアップし、かつ、起承転結をつけており、そつのない脚本だとは思う。
 しかしながら、原作にあった、よくも悪くも観念的というか、スピリチュアルな部分が基本的にはなくなっており、結果、ペニーワイズが卑小な存在になってしまったようにも思う。ペニーワイズって棒で殴ったらダメージ与えられるんだ……!? なので、同時にビルが吃音という設定も十分に消化し切れていなかったと思う。
 続編への含みをもたせた結末ではあったが、初めから前後編くらいでじっくり描くか、まあ、でも、それもアメリカの映画業界的には難しいだろうで(たぶん、続きものは基本的にNGなんじゃないでしょうか?)、もしくは登場人物をばっさり整理してビル、ベヴァリーともう一人くらいに絞るかした方がよかったかもしれない。素人意見だが。
 トータルとしては、原作のビジュアル的に美味しい場面が映像化されていて嬉しいが、原作のプロット的に美味しい場面が十分に盛り込まれてないけど、ボリューム的にはしょうがないよね、というところでしょうか。

 

IT イット“それ

IT イット“それ"が見えたら、終わり。