中元日芽香 さんは、推しメン、ではない。 ただ、ずっと引っかかる存在、ではあった。 レギュラーだった「らじらー!サンデー」(NHKラジオ第1 )の2015年9月6日の回――この頃、中元さんは乃木坂46 の選抜からもう2年近く遠ざかっていた。クラシカルなアイドルを追求しつつ選抜に選ばれないという状況について、MCであるお笑いコンビオリエンタルラジオ の中田敦彦 、藤森慎吾と次のように話している。
中田 どうしたら選抜なれるの? ざっくりとした質問だけど。どうしたら選抜ってなれるものなの? 藤森 確かに分からんね、これは。 中田 なろうぜ、応援しようぜって言ってる我々だけれども、なにをしたらいいのかっていうのをね。 藤森 ひめたんが一番大変だと思うけども。 中田 なんか思うところはある? これをがんばれば選抜に近づけるんじゃなかろうか、みたいな。 中元 うーん、なんだろう…… 中田 爆発的にお客さんからのリアクションがよくなったらいくとか、ってのもある? 中元 もちろん、それは一つの審査対象、じゃないですけど…… 中田 急に花開く子とかっているの? 中元 見てて、あ、すごい、最近、この子来てるなとか、そういうのはありますけど…… 中田 あるわけでしょ。 中元 そうなるのは難しいので。 中田 めちゃめちゃネガティブ(笑)。 藤森 ひめたん! ……でも、ほら、ツインテール やめてさ、新たにっていうことでしょ? 中元 そうですね。ツインテール は選抜発表より前に私が勝手に決めたことなんですけど、なんか違うのもいいなって思ってやってみて、みたいな。 中田 なんか掴みたいよね。
中元 裏側をあんまり見せないことが、あたしのアイドルの美学としては綺麗なのかなというか。アイドルは憧れの存在であってほしくて。あたしの中で。もう、手が届かない存在みたいな。 中田 だから、アイドル像のビジョンがはっきりしてるんだ。アイドル好きだから。そういうアイドルになりたいっていう。 中元 完成された理想像みたいなものがあって、今までそれに近づくようにいろいろやってたんですけど。ツインテール 、とか。ほんとにツインテール が好きだったりピンクが好きだったりってのも、もちろん、あるんですよ。なんですけど、ここに来て、なんかちょっと……もう分かんなくなっちゃいました、自分でも。 中田 もうワンステージ上がるために、このままでいいのかってのもあるから……でもさ、アイドルが好きで、これこそがアイドルだってビジョンがあるのってすごいよね。 藤森 確かにね。裏は見せないって徹底して意志があったんだね、元々ね。
ちなみに、この回のゲストで登場したメンバーの高山一実 さんが、乃木坂46 の中では中元さんを推しているという話をしている。理想のアイドルを追求するも選抜になれない中元さんと、そうはなれないからこそ中元さんを推す選抜の高山さん、という意図せぬ対比を興味深く感じた。
藤森 元々どうなの? 二人の関係性は。 中田 どういう感じなの? 距離感は。 中元 そうですね、おなじ一期生で、かずみんは3つ上なんでお姉ちゃんみたいな感じなんですけど。 藤森 かずみんの方が上なんだ。 高山 そうなんですよ。私、元々アイドルが好きで、乃木坂の中でも推しメンにするなら、ひめたん、って言ってるくらい、可愛いんです。 中元 言ってくれてるんですよ。 中田 俺が訊きたいのは、高山さんがどこを推してるの? どこがいいんだって。 高山 ほんとにキャラとかじゃなくて普段からザ・アイドルって感じで、ピンクが好きだったり、リボンが好きだったり。あたし、モーニング娘。 さんの道重さゆみ さんのファンだったんですよ、ずっと。 中田 アイドル性高いもんね。 高山 そうなんですよ。で、ひめたんもピンクって感じで。そういう子が好きなんですよ。 藤森 確かにね。 中田 そうかあ。やっぱりアイドル好きは、パーフェクトスーパーアイドルを好きになるし、高山さんもそうなわけだ。ひめたんもそうだし、それに向いてるからそれを追求してきたわけだよね。 中元 そうですそうです。 中田 そうなんだ! 藤森 だって、高山さん、好きなんだけど、そういう感じでもないしね。 中田 だって、道重さん、ポジピースって感じでもないもんね。 高山 そうなんですよ。それがすごくショックなんですけど。 中田 ショックなんだ(笑)。自分は自分でね、このやり方でいくんだと。でも、そうじゃない道をひめたんがいってるわけだから、ある意味憧れでもあるんだ。 高山 リスペクトです、ほんとに。 中田 それは面白い関係だ。
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その後、半年ほど経過した2016年3月27日の「らじらー! サンデー」で、変わらず選抜になれていないことについて、オリエンタルラジオ から質問を受けている。
中田 どうなんですか? なれそう? 藤森 ぶっちゃけ。 中元 え? うー…… 中田 言っちゃってもいいと思うよ。 藤森 言っちゃってよ。 中田 実感としてどうなんですかね? 中元 実感ですか? いや、実感はまだすごい遠い存在ではありますけど…… 中田 たってさ、アンダーのセンターなわけだよ。 中元 そうです。 中田 もう一枚上っていう感じなんじゃないの? 中元 その一枚が分厚いんですよー。 中田 分厚くきたわけだ。 中元 でも、皆さんが本気で福神になろうぜ、頑張ろうぜって言ってくださる。らじらーのおかげで、言ってくださる方もすごく増えて。期待をしてくださってるなら私も頑張らねばっていう。一年前よりも思ってます。 中田 そうだね。遠いなとか私なんかがって言ってちゃいけない存在になってきたのかもしれないよね。 中元 そうなんですかね…… 藤森 こっちも現実味を感じているもん。見たいし、その喜びをやっぱ一緒に味わいたいな。 中元 あ~。頑張ります! 中田 だって、すごいストーリーがあるもんね、アンダーのセンターって存在にはさ。それが福神になったら、それはやっぱ醍醐味だよね。
やはり歯切れは悪い。この回にゲストとして出演したメンバーの橋本奈々未 さんが、東京ガールズコレクション のランウェイを歩いた時の感想を訊かれ、少し視点をずらして軽妙な切り返しをしたのとは対照的かもしれない。
中田 「……そういえば、ななみんとオリラジさんはつい最近東京ガールズコレクション でランウェイを歩いたんですよね。僕はランウェイを歩いたことがないので、歩くとどのように感じるのか分かりません。感想を教えてもらえませんか?」 中元 ランウェイどうでした? 藤森 僕らファッションショーじゃないから。 中田 でも、僕ら歌ったあとに一応一回歩かせてもらいましたけどね。 橋本 見てました。 中田 あ、見ててくれたんだ。 橋本 見てました、横から。関係者の方がほんとにみんな見たがって、ぱんぱんになりながらうしろから見てました。 中田 嬉しい。 藤森 盛り上がってました? 橋本 めっちゃ盛り上がってました。 中田 よかった。 橋本 出てきた時に「わー!」ってなってて。すごいな、一世を風靡してるなって。 中田 一世を風靡してるなって思ったんだ(笑)。なかなか言われないけどね。 藤森 楽屋にもメンバーみんなで来てくれて。写真撮らせてもらっちゃったりなんかして。 中田 あれ出てる時、どういう気分で歩いてるんですか? ななみんは。 橋本 何年か前からこういうファッションイベントのランウェイ歩かせてもらってるんですけど、何回歩いてもやっぱり女の子の目が強烈に突き刺さる感じ。 中田 ああいうファッションショーって女の子が女の子に「きゃー!」って言う会場だもんね。 橋本 あれがすごく厳しい目を向けられてる気がするんです。 中田 あ、厳しい目で見られてると思うんだ。 橋本 はい。普段のライブとかのステージでは男の方が割と好意的な目で見てくれるんですけど、ランウェイでは「どんなもんじゃ」みたいな感じで見てくれてて。 中田 「ちゃんとモデルやってんの?」みたいな。「おしゃれしてんの?」みたいな。「着こなせてんの?」みたいな。 藤森 いや、そんなに厳しくないですよ。 中田 「歩けてんの?」みたいな。 藤森 歩けてるよ! 中田 そうやってみんな見てくるわけだ。 橋本 そんな風に感じちゃって。ほんとはもっと好意的なのかもしれないですけど、試されてる感がすごくて。でも、最近になってようやく乃木坂っていうものが知ってもらうことがだんだん増えてきたのか、「わー!」って言ってくれる人が増えてきて。
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その後、中元さんは2016年7月の15thシングルで悲願の選抜復帰となったわけだが、中元さんの中で自分のキャラク ターの客観視みたいなのはそれより前から徐々に行われていたようで、2015年11月8日の「乃木坂工事中」(テレビ東京 系列)で、井上小百合 さんと伊藤万理華 さんから富山旅行に誘われなかったというエピソードが披露されていた。これが、中元さんの悲壮感というか、生真面目な優等生タイプのキャラク ターというか、性格がちょっとめんどくさい感じなのを、自ら笑いに転化した、なかなか愉快な回だった。たぶん、中元さんが自ら笑いを組み立てて取りに行った初めての回だと思う。 中元さんの笑いの切れ味が最もよかったのは、2016年6月10日~12日の「乃木坂46 時間テレビ」で、先述のエピソードを踏まえた通称「わだかまり 温泉」ロケをした時の思い出話をする場面だった。ロケ内で一緒に購入したぬいぐるみを井上さんと伊藤さんは今どうしているかという話で、これは完全にコントなんだけど、バナナマン やオリエンタルラジオ といった芸人なしでちゃんとコントを成立させていて、すごいと思った。 個人的には中元さんの歌唱が結構好きだった。乃木坂46 の歌唱はユニゾン がメインなので乃木坂46 としての楽曲でソロはあまり多くなく、むしろ時々あるカラオケ企画の方が持ち味を発揮していた。当代一うまいというわけではないが、ストレートな歌唱と、「世界でいちばん熱い夏」(PRINCESS PRINCESS )や「翼の折れたエンジェル 」(中村あゆみ )といった選曲がよかった。「世界でいちばん熱い夏」のカバーは、Huluで、「NOGIBINGO! 」シーズン5#8の中で観られる(14:14~)。
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「のぎ天 #45 乃木團台湾ライブ密着(後半戦)」より
乃木坂46 内ユニット「乃木團」でも能條愛未 さんとのダブルボーカルを担当していて、それもよかった。乃木團で好きなのは乃木坂46 デビューシングル「ぐるぐるカーテン 」のセルフカバー(バンドバージョン)。「楽天 TV」の「のぎ天」#45の乃木團台湾公演回で観られる(登録不要で再生可能。11:45~)。
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中元さんといえばオリエンタルラジオ だけれども、中元さんが選抜復帰したのとRADIO FISHがブレイクしたのが似たような時期だったのもいいタイミングだった。「ミュージックステーション 」で共演した際、ステージへ移動する乃木坂46 に対して、藤森さんが「ひめたんがんばれ! ひめたんがんばれ!」ってなぜか2回繰り返していたのも面白かった*1 。 先日2017年11月19日の「乃木坂工事中」で、バナナマン が卒業の餞別にと中元さんへお惣菜のミートボールを渡したのは、本当に洒落ているなと思った。4年前に「乃木坂ってどこ?」で中元さんがごはんのおかずはミートボールという話をした時、バナナマン がノリだけで「ひめたんの隠しミートボール」と節をつけて切り返したというだけのネタで、ファンにとっては印象的なフレーズだけれども、バナナマン も中元さんもちゃんと覚えていたのがよかった。
『松村沙友里 の『推しどこ』』所収#114「乃木坂46 No.1食いしん坊は誰だ!?」より
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