ぶりだいこんブログ

推理小説とか乃木坂46の話をしています。

『ノック 終末の訪問者』(M・ナイト・シャマラン/2023)

 森のコテージで休暇を楽しむ家族の元へ、武器を持った四人組が現れる。四人組は言う、これから世界の終末が訪れる、回避するには家族の中の一人を選び、犠牲としなければならない、と――
シックスセンス』(1999)、『アフターアース』(2013)などで知られるM・ナイト・シャマラン監督の最新作。出演はデイヴ・バウティスタ、ジョナサン・グロフら。

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 前半は面白かったのだが、後半は自分が付いていけないタイプのシャマラン映画だった。

 ※ネタバレしています。

 少女ウェンが森の中でバッタを捕まえていると、大男がやって来る。大男はレナードと名乗り、ウェンの親に用があると言う。そこにレナードの仲間だという武器を持った三人の男女が現れる。恐怖を感じたウェンは滞在していたコテージへ逃げ込み、「二人の父親」であるアンドリューとエリックに不審者の訪問を伝える。やがてコテージのドアがノックされ、「話をしたい」とレナードの声がする。
 アンドリューとエリックはドアを閉ざすが、一味は窓を破って侵入し、二人を拘束する。レナードは「これから世界の終末が訪れる。きみたちが家族の中から犠牲者を選び、自分たちの手で捧げることで、終末は回避される」と告げる。当然、アンドリューとエリックは信じないが、四人組の一人、レドモンドが唐突にひざまずき、白いマスクを自ら被る。残りの三人は手にしていた武器でレドモンドを虐殺する。そして、レナードはTVを点ける。TVの向こうでは西海岸に巨大な津波が押し寄せていた。
 アンドリューたちは逃げ出そうと試みる。その過程で訪問者の残りのエイドリアン、サブリナも死ぬ。そのたびごとに、大規模な疫病、飛行機の大量墜落事故が起きる。そして、レナードも自死を遂げ、いよいよコテージの周囲にも雷雲がたちこめる。
 エリックは四人組が黙示録の騎士であったと語り、自分を犠牲者とするようアンドリューへ懇願する。苦悩の末、アンドリューはエリックを射殺する。途端に災害は収まっていくのだった。生き残ったアンドリューとウェンは、三人の思い出の楽曲を流しながら車をいずこかへと走らせていく――

 前半は面白い。
 シャマラン作品としては珍しく、開始して割とすぐに訪問者と家族の攻防が始まり、スリリングだ。それでいて訪問者の目的が謎で、スリルと謎を同時提供するのがうまい。また、ゲイのカップルとアジア系の少女の養子という一家のプロフィールを、説明的にならず会話や断片的な回想で描くのも手際がよい(シャマランって登場人物のプロフィールをさっと描くのがうまいんだよな)。
 映画を観ている最中、レナードが語る「世界の終末」、実はフェイクでないか、と一瞬考える。コテージは周囲から孤絶していて、携帯電話の電波も届かない。大災害を語るのはTVのニュース映像だけ。であれば、すべてはレナードたちのハッタリで、アンドリューたちを騙そうとしているのでないかと。でも、これまでのシャマラン作品を振り返ると、これはきっとそういう話でない(実際に黙示録的な事態が進行している)のだろうなと思い直す。

 そんなわけで後半は本当に「世界の終末を防ぐためにどうやって誰を犠牲に選ぶか?」という話になってしまい、自分などはちょっとテーマ性についていけなくなってしまった。狂信的な集団に家族の中から犠牲者を選べって突然言われたら本当に怖いし、どうしていいか分からないよな、という(主に前半の)シチュエーションは面白いと思うけれども、実際に家族の中から犠牲者を選定するというストーリーを自分ごとに引きつけて考えるのはちょっと難しい(ので、途中からいまいち感情移入できなくなってしまう)。

 とまあいろいろ書いてしまったけれども、映画としての基本的な部分でのクオリティはやはり高いと思うし、M・ナイト・シャマランはコンスタントに映画を作り続けていて、本当に偉いなと改めて思う。

 

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