ぶりだいこんブログ

推理小説とか乃木坂46の話をしています。

『ザンビ』(高山直也、児玉明子/2018)

 乃木坂46欅坂46けやき坂46の3つの女性アイドルグループから若手人気メンバーを抜擢した舞台。
「ザンビ」と呼ばれるアンデッドの感染拡大が広がる中、主人公たちが逃げ込んだ収容所で一人また一人とザンビに襲われたとしか思えない死者が発生し、収容所の人々は「ザンビが紛れ込んでいるのではないか」と疑心暗鬼に囚われる――
 出演は乃木坂46から与田祐希山下美月/久保史緒里&梅澤美波ダブルキャストに、共演として岡田あがさ、大胡愛恵、國森さくら、柿丸美智恵ら。脚本は映画『サイレン 〜FORBIDDEN SIREN〜』等の高山直也。演出は宝塚歌劇団演出出身の児玉明子。劇場はTOKYO DOME CITY HALL。2019年1月よりTVドラマ版も放映予定。

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舞台ザンビ公式ウェブサイトより

 ※ネタバレしています。

 自分は乃木坂46を応援しており、今回出演メンバーでは特に久保史緒里さんを応援しているので、久保さんが出演しているTEAM "BLUE"の公演を観に行った。TEAM "BLUE"は久保さん、梅澤さん、欅坂46菅井友香さん、守屋茜さん、けやき坂46の柿崎芽美さん、加藤史帆さんが出演している。
 始めによかったところから。
 久保さんの演技が優れているという感想をチラ見はしていたのだけど、確かに演技、歌唱共に十分の出来。もちろん、共演の方々は普通の上手でいらっしゃるので、出演陣の中で群を抜いて、というわけではないですが、逆に言うと、普通に上手です。特に、声を荒げないような、ぼそっとセリフを呟くあたりにうまさがありました。
 次にあまりよくなかったところを。
 メインストーリーは、「安全なはずの収容所でザンビの被害者が発生するのはなぜ?」というミステリ要素と、主人公二人――久保さん演じる鳴沢摩耶と梅澤さん演じる一ノ瀬杏奈の友情と疑念というドラマ要素にあるわけですが、冒頭の、命からがら収容所に逃げ込むとそこには鬼看守がいて、というくだりの意味ありげなんだけど恐ろしく記号的な意味ありげっぷりに、うーむ? と腕を組んでしまった。
 その後も、収容所の食料が足りなくていさかいになるくだりとか(これがまあ伏線になるわけですが……)、杏奈(梅澤さん)のお姉さんがザンビ化したのを摩耶(久保さん)が絶命させていたと判明するくだりとか、うーん、実に手垢がついているのです……
 ゾンビものって近年は大量に作られており、例えば、『REC/レック』のようなPOV形式、『WORLD WAR Z』のようなインタビュー形式、『アイアムアヒーロー』のような日常から非日常への転換のねちっこい描写、『がっこうぐらし!』のようなどんでん返し、『カメラを止めるな!』のような緻密な伏線と回収……などなどそれぞれに新規性があるわけですけれども。ゾンビ+ミステリ要素というと、これまた『屍人荘の殺人』という、これまた強大な先行者がいるわけで。
 あ、最初の被害者の遺体が吊るされた状態で「じゃーん!」って降ってくる場面は、ショッキングでよかったですね。そこは舞台ならではでよかったです。
 演者に責はなく、基本的には脚本がよくないのだとは思う。ただ、この舞台は「ザンビプロジェクト」と呼ばれるメディアミックスの一形態なので、もしかすると、脚本制作にあたってなにか決定的な制約があったのかもしれない(例えば、世界観的なネタをドラマ版へ譲らなければいけないとか)。あと、自分は乃木坂46ファンのため、舞台のトータル的な不満足を演者でなく脚本に寄せて解釈してしまっている可能性は否定しきれない。
 いずれにしても、どういった創作欲求があってこの『ザンビ』という舞台を企画したのか、観終わってもいまいちぴんと来なかった。秋元康さんが「『ウォーキング・デッド』とか流行ってるし、ゾンビ+アイドルとか面白そうだな」くらいのノリだったのかもしれない(言っても『ウォーキング・デッド』始まったの2010年だけど)。それならそれで『ゾンビランドサガ』くらい研ぎ澄ませてもよかったわけで。

zambi-stage.com