ぶりだいこんブログ

推理小説とか乃木坂46の話をしています。

『TENET テネット』(クリストファー・ノーラン/2020)

 元CIA諜報員は銃痕が消えて弾丸が銃口へ戻る不思議な現象を目の当たりにする。未来から送られてきたそれらの兵器を使い「第三次世界大戦」を引き起こそうと企む者たちがいるらしい。陰謀を防ぐために彼は調査を開始するが――
 主演はデンゼル・ワシントンの息子ジョン・デヴィッド・ワシントン。他、ロバート・パティンソンエリザベス・デビッキケネス・ブラナーらが出演。監督は「ダークナイト」シリーズ、『インセプション』などを手掛けたクリストファー・ノーラン
www.youtube.com

 面白かった。よくも悪くもいろいろ言いたくなる作品である。

  ※ネタバレしています。

 本作はしばしば「一度観ただけでは十分に理解できない」と言われる。個人的に、これは時間逆行現象を取り扱っているからでなく、話自体が分かりづらいからでないかと思う。あらすじを説明しようとすると、思いのほか大変であることに気づく。それこそ一度観ただけで、冒頭のキエフの劇場襲撃場面、マイケル・ケインが登場する場面、オスロー空港での飛行機ぶつけちゃう場面を、あらすじとして手際よく説明できる人がいるだろうか? 全体を通して考えると、それぞれ、まあ、必要な場面である。しかし、プロットとして刈り込もうと思えば刈り込める。なんでこんな妙なストーリー展開にしたのか、後述するようにスパイ映画のフォーマットを意識したからなのだろうか……?
 一方、話がよく分からなくても、かっこいい絵面に、シリアスなトーン、もっともらしい会話劇、といういつものノーラン節で、楽しく観ることができる。時間逆行場面がかっこいいだけでなく、回送列車が行き交う操車場や、風力発電機が立ち並ぶ洋上など、いいロケーションを選んできているなという感じ(ノーラン本人がロケハンしてるかは知らんが)。
 主人公がインドやノルウェーエストニア*1のようにやたらと世界中を駆け巡るところとか、あとはインドで武器商人の邸宅へ忍び込むために逆バンジーをするという(ストーリー展開にはまったく影響しない)アクションギミックとか、本作はスパイ映画の風味が濃厚である。『ダークナイト』や『インセプション』でもスパイ映画の味付けはあったけれども、本作は突出しており、ノーランって007が好きだったのかと思った。絵面や語り口がノーランなのに、キャラクターたちがやってることは007という、これまた妙な佇まいに仕上がっている。*2
 時間逆行中は呼吸がうまくできないという設定をでっち上げ、「酸素マスクをしている時は逆行中」とビジュアルに示したのは地味にうまい。
 あと、ブルックスブラザースがディスられていて(「億万長者を名乗るならブルックスブラザーズではちょっとね……」)、映画でブルックスブラザーズがディスられるのは『ソーシャルネットワーク』(デヴィッド・フィンチャー/2010)以来だなと思った。

*1:スパイ映画でタリンを舞台にするの渋いなと思った……でも、旧市街とかは全然出てこないのな!

*2:今、ウィキペディア見たら普通にジェームズ・ボンドが好きとありましたね
"He is also a fan of the James Bond films,[127] citing them as a "a huge source of inspiration" and has expressed his admiration for the work of composer John Barry.[128]"
Cinematic style of Christopher Nolan - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Cinematic_style_of_Christopher_Nolan