ぶりだいこんブログ

推理小説とか乃木坂46の話をしています。

『HiGH&LOW THE WORST』(久保茂昭/2019)

 EXILE HIROが企画プロデュースするアクション映画「HiGH&LOW」、通称「ハイロー」シリーズの映画第6弾。シリーズに登場していた不良学校「鬼邪高校」(おやこうこう)と、髙橋ヒロシのマンガ『クローズ』、『WORST』に登場する「鳳仙学園」が対決するコラボレーション作品。
 出演は川村壱馬(THE RAMPAGE from EXILE TRIBE)、山田裕貴、志尊淳ら。監督はシリーズを通して担当している久保茂昭

www.youtube.com

 ※ネタバレしています。

 映画6作目で制作陣も慣れてきたからか、語り口が実に淀みない(登場人物勢を一新して初期設定に変に引きずられなくなったからかもしれない)。複雑なキャラクター相関を(それ自体は必要だったのか疑問がなくもないけれど)、学校が舞台らしく黒板でさっと説明する手つきも秀逸。また、シリーズを通して磨き上げてきた、「キャラクターが登場するとそのキャラのかっこいいテーマソングが流れる」という演出が、今作でもいかんなく発揮されている。本当にこれテンション上がるし、ここまで意識的に実践している映像作品も他になさそうだし、今から振り返ってみると「ハイロー」シリーズの偉大な発明だったのではないかと思う。
 アクションシーンは相変わらずかっこいい。お得意の集団乱闘シーンをワンカットで描く演出が決まっている。河原での戦いで、乱闘しているところをぐーっとカメラが上から舐めて振り返っていく場面、原理はなんとなく分かるんだけど、実際に撮影するとなると本当に大変だろうなと思う。
 終盤の戦闘、「絶望団地」を占拠する牙斗螺(キドラ)と対決する場面では、投石などを仕掛けてくる牙斗螺に対し、鬼邪高と鳳仙が脚立を持ち出して乗り込んでいこうとしていて、すごい、これ、攻城戦だと思った。21世紀の日本で団地を使って攻城戦を現出させるなんて、大した着想と実現力。
 今回は高校生のキャラクターがメインで比較的地に足がついた空気だけれども、鬼邪高の番長村山さんが登場すると急にマンガちっくになり、ハイローの空気をファンタジーにしていたのはSWORDの連中だったのかと改めて感じた。しかし、村山さんはコメディリリーフとして存在感を出しつつ(真面目にバイトしているだけで笑えるっていい持ち味ですよね)、きっちりと見せ場があり("JUMP AROUND∞"がかかるとアガる!)、そして、「卒業」(鬼邪高からの卒業とハイローからの卒業のダブルミーニング!)もきっちりと描かれ、よかったですね。窪田正孝といい山田裕貴といい人気者が次々とハイローから卒業していくけれど、彼らの今後のことを考えるとやむを得ないですかね……(アイドルファンか)
 ストーリーは、クライマックスの一つである鬼邪高と鳳仙の戦いが、お互いの勘違いだったというのがいまいち腑に落ちない(そういう罠だったわけですけれども)。その後の共闘への仕込みというのは理解できるが、戦い自体に意義がないことになってしまいやや乗り切れない。もう少しどうにかならかっただろうか。
 あと、下町育ちの中で一人だけ勉強のできる子がいるっていうのと、やむにやまれず悪に染まっていく仲間を連れ戻すためにケンカするっていうシチュエーションはドラマシーズン1や映画第1弾の再話とも言える。新太と誠司はドラマのノボルと映画の琥珀さんを足して2で割ったようなキャラ設定だ。この辺、脚本家の一種の書き癖なのだろうか。

 全体として、キャラ立て演出とアクションの磨き上げは他に類がなく、また、シリーズ過去作の反省も十分に踏まえられていると思われ、このノリにはまることができれば最高に愉快の2時間が過ごせる作品である。

buridaikon.hatenablog.com