ぶりだいこんブログ

推理小説とか乃木坂46の話をしています。

『神と共に 第一章: 罪と罰』(キム・ヨンファ/2017)

 韓国のウェブコミックを原作に、救命活動中に命を落とした消防士が冥界の弁護士と共に地獄の裁判を巡る映画。韓国では『新感染 ファイナル・エクスプレス』(ヨン・サンホ/2016)を上回るヒットとなったという宣伝文句も。
 出演はハ・ジョンウ、チュ・ジフン、キム・ヒャンギ、チャ・テヒョンら。監督はキム・ヨンファ

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 以前に予告編をちらっと見た感じでは、「うーん、地獄巡り……?」と食指が動かなかったのですが、公開後、随分評判がよいので観に行くことにしました。
 これ、すごいですね。韓国映画全部のせというかなんというか、おなかいっぱいな上にデザートもあるという気前のよさ。

 ※ネタバレしています。

 まず冒頭の、消防士キム・ジャホンが命を落とすことになるビル火災の場面からテンション高めで引きつけられるし、観ることをためらわせた「地獄巡り」という基本設定が、実は序盤からイベントを畳み掛けるストーリーテリング装置になっていたんですね。
 どういうことかというと、一般的なストーリー映画だと、こういう主人公がいて、こういう生活を送っているけど、ある日事件に巻き込まれて……ってな感じで物語を順番に展開させていくわけですが、『神と共に』は、まず死にました! あなたはこれから7つの地獄で裁判を受けてもらいます! さあ、1つ目の地獄です! という感じで問答無用に観客をお話へ巻き込んでいくんですね。地獄も7つもあるものだから、次から次へとどんどこ地獄が現れる。あと、地獄が一種テーマパーク的というか、裁判で負けたらひどい刑罰を受けるんですけど、怖いというよりハラハラドキドキって感じでなんか楽しそうなんですよね。地獄から次の地獄へはまさにジェットコースター的な乗り物で移動するし、このままディズニーランドのエリアになってもよさそうです(韓国だからロッテワールド?)。
 地獄の物語上の役割はイベント発生装置というだけでなく、主人公を重層的に描くための仕掛けにもなっています。結局、地獄で死人を裁くというのはその人がどういう生き方をしたのかを描くことになるわけで、単なる生真面目な消防士に見えた主人公の、家族との葛藤が、裁判が進むごとに少しずつ明らかになるという構成がうまい。
 いくらアトラクション仕立てとはいえ地獄裁判だけだと少々単調になりかねないところを、現世パート(死んだ主人公を執拗に付け狙う怨霊とバトルしつつ、正体を探す)を織り交ぜていくところがまたうまい。
 キャラクターも実にマンガ的キャラ立ちがあって、冥界弁護士(&護衛)トリオがやっぱり好きになってしまう。

 本作のテーマは最終的に、息子から母への愛、というところ着地して、21世紀でストレートにこれをテーマにするのって韓国映画だけだよな……と思ったけど、日本でも最近の吉永小百合映画とかはそうなのかな……

 本作で消防士の話はきちんと畳みつつ、ラストで続編への引きとして人気者マ・ドンソクを出すのもツボを押さえている。エンドロール後に『第二章: 因と縁』の予告編を流すのも、最高のデザートじゃないですか(この辺の手管はちょっと『バーフバリ』っぽいですよね)。

 個人的には『新感染』の方が完成度が高く、好きですが、韓国では『神と共に』の方がヒットしているというのはさもありならんと思う。だって全部のせで面白いもんな。