ぶりだいこんブログ

推理小説とか乃木坂46の話をしています。

『リラックマとカオルさん』(小林雅仁/2019)

 リラックマにはさほど関心をもっていなかった。キャラクターものだと、強いていえば「カナヘイの小動物」派だった。しかし、Netflixオリジナルアニメ『リラックマとカオルさん』を観て以来、転んでしまいそうだ、リラックマに。

リラックマとカオルさん』は全13話のストップモーションアニメだ。リラックマでストーリーアニメなんて作れるの? という向きもあろうが、お話を転がしているのはタイトルにも登場するもう一人の主人公、カオルさんである。
 カオルさんは、キャラクターグッズ上の設定はリラックマの居候先の家主というだけで姿を現さないのだが、今回、ストーリーアニメ化するにあたりキャラクターとして大幅に肉付けされている。鮫島物産という企業に勤めるアラサーのOLで、彼氏募集中。そのカオルさんが、友達と花見に行こうとするも裏切られたり、実家の母親から東京でつまらない仕事してないで帰ってこいと電話されたり、占い師から変な腕輪を買わされたり、とほほな、しかし、なかなか味わいのある生活が描かれる。
 この生活感を裏付けるのが、カオルさんのファッション(可愛すぎず地味過ぎずのまさにアラサーOLなファッション!)、ビンテージ風のインテリア、それから料理風景と食事風景なのである。雑然とおしゃれの絶妙なバランスが、視聴者を物語の世界へよく引き込む。

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Netflixリラックマとカオルさん』第1話より

 ディテールといえば、カオルさんが職場でOffice2016(的ななにか)を使用しているの、細かい。

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Netflixリラックマとカオルさん』第6話より

 カオルさんの声優は多部未華子である。始めは少し違和感を覚えていたが、観続けるとはまる。人形のカオルさんにちゃんと命が吹き込まれている。しかし、多部ちゃんってもう30歳なの。JR大船駅のCM、12年前か……そりゃ多部ちゃんもビールの宣伝するわけだ……

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 それにしても、カオルさん、素敵な男性との出会いが……と口にはするもの、リラックマたちとの暮らしで寂しさが紛れてしまっており、完全に結婚できない女まっしぐらである(こういった元々のキャラクターグッズにない脚色を好まないコアなリラックマファンもいるようだが)。

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Netflixリラックマとカオルさん』第4話より

 カオルさんのキャラクターとも共にこの作品の魅力の両輪をなすのはリラックマたちの可愛さだろう。
 リラックマの初登場場面である。

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Netflixリラックマとカオルさん』第1話より

 おしりの辺りの微妙なたわみ、朝の陽光、そして、このずんぐりむっくりした図体が寝息で上下しているのである……! リラックマのお披露目として完璧ではないか!
 リラックマは原作のイラストに比べるといくぶん「おじさん」っぽくなっている。でかいし、声も低い(クマだからかもしれないけど)。そのおじさんっぽいリラックマが、ホットケーキを焼いては焦がしてしまい、だらだら寝過ごしてからだからきのこを生やす。また、どんなアルバイトをしても役に立たず、立て続けにクビになってしまい、自分の不甲斐なさにいら立つ場面があって、おじさんの自分はなんだか胸に迫るものを覚えてしまうのである(リラックマはだめでも可愛いからいいけど、おじさんはだめなだけなので終わってますね……)。
 コリラックマキイロイトリも可愛い。特に、キイロイトリが清掃のアルバイトで評価されて、給料袋をカオルさんに渡す下りは、可愛さと面白さでふふっとなってしまう。アバンタイトルの小芝居も大好き。

 Netflixは先行してサンリオ原作のアニメ『アグレッシブ烈子』を制作しており、こちらも可愛らしいキャラクターと女性社会人の生きづらさをミックスして、コミカルに描いた作品だった。モラトリアム感をより先鋭化させた『リラックマとカオルさん』は、むしろ他のアメリカ制作のNetflixオリジナルドラマ、例えば、『マスター・オブ・ゼロ』とかに近いかもしれない。

 とにかくリラックマたちが可愛いし、いろいろな観方ができる作品だし、人気も高いと思われ、全13話を観終わってしまった今、早くもシーズン2を待ち遠しく思っている。

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