乃木坂46の個人PVは、彼女たちがデビュー時から行っているシングルCDの特典映像の一つで、メンバー一人一人が外部の映像作家と組み、5分程度のショートフィルムを制作する、という企画である。
2018/11/14に発売された22枚目シングル『帰り道は遠回りしたくなる』では、初回仕様限定版Type-A~Cに選抜メンバー21名の個人PVが収録されている。
個人的にコメントしたくなる作品をいくつかピックアップした。Type-AからCまでCDジャケット裏の記載に従い順番に取り上げている。どれから観てよいのかという人がいらっしゃるかもしれないので、特におすすめのものは「オススメ!」と記載している。
※ネタバレあります。
Type-A
生田絵梨花「モブキャラ 生田」(森翔太)
Youtubeのサムネイルだけで森翔太監督作品と分かってしまう(それは八木光太郎さんが出ているからでは?)。
森翔太
乃木坂46の個人PVでは、13th「愛の二等辺三角形」(斉藤優里)、14th「わたしは不幸を呼ぶ女」(堀未央奈)、17th「教習所で見せられる保険加入のビデオ」(松村沙友理)、「ホラー映画で一番最初に死ぬやつ」(与田祐希)。
井上小百合「Weekend」(頃安祐良) オススメ!
頃安祐良さんといえば乃木坂46の個人PVをいくつも手掛け、どちらかといえば叙情的で映像による感情表現を重視するタイプの作家だと捉えていたので、予告を観た時は「え、頃安さん、随分路線変更したのね……」と思っていたけど、本編を観ると、頃安さんも演者の井上さんも自分を出さずストーリーのために奉仕しており、これは両者にとってもよい意味での新機軸!
頃安祐良
乃木坂46の個人PVでは、9th「ともだちのともだち」(井上小百合)、10th「卒業式のあとに、」(若月佑美)、11th「愛の飛び蹴り」(井上小百合&斉藤優里)、12th「結婚式/ロマンス」(深川麻衣&若月佑美)、13th「誰がために」(高山一実)、14th「20」(伊藤万理華)、17th「個人PVについて私が知っている五、六の事柄」(久保史緒里)、20th「一カ月前、春のうた」(吉田綾乃クリスティー)。
白石麻衣「マジっ子まいやん」(月田茂) オススメ!
女神・白石麻衣さんが可愛い格好をしているのがブルーレイ画質で観られる幸福。とぼけた演出にして可愛くなり過ぎないよう微調整するも、可愛さ全然抑えきれず。
月田茂
乃木坂46のミュージックビデオでは山本篤彦、柴田麻以らと「無表情」。
個人PVでは、単独で13th「ミュージカル 齋藤飛鳥」(齋藤飛鳥)。柴田麻以と14th「待ってるガール」(西野七瀬)、17th「ホリースターダスト」(堀未央奈)。山本篤彦、柴田麻以と9th「SHIRITORI」(中元日芽香)、10th「からあげ姉妹I, II」(生田絵梨花&松村沙友理)、11st「からあげ姉妹III, IV」(生田絵梨花&松村沙友理)。
星野みなみ「みなみ 絵本をつくるの巻」(高崎絢斗&宇野まほみ)
ドラマ仕立てだけど素の感じもあり、ゆるい雰囲気が星野さんらしい。ちなみに、みなみちゃんの描いた絵本はどんでん返しもあり、本格ミステリです(そうか?)。
高崎絢斗&宇野まほみ
乃木坂46の個人PVでは、17th「煩悩の数だけkissをする」(川後陽菜)。
与田祐希「ピクニック」(鈴木郁実) オススメ!
動物着ぐるみの与田さん鬼可愛い。これは人気になるわけだと改めて得心。
Type-B
秋元真夏「タイムトラベラー」(山田篤宏)
出たがりの秋元さんが脇に回ることで、かえって魅力が引き立つ。抑制の効いた演出がよい。
山田篤宏
乃木坂46のミュージックビデオでは「13日の金曜日」、「君は僕と会わない方がよかったのかな」。
個人PVでは、1st「ホームドミノ」(川後陽菜)、2nd「魔法を掛ける少女」(川後陽菜)、3rd「台湾」(川後陽菜)、4th「姿勢」(永島聖羅)、「人見知り」(西野七瀬)、7th「A Girls' Talk」(斉藤優里)、9th「2人の麻衣×麻衣」(深川麻衣)、「a trainee's fugue」(2期生研究生)12th「どちらかが"彼"を殺した」(星野みなみ&松村沙友理)、14th「彼女の思い出」(若月佑美)、17th「山下美月の二重奏」(山下美月)。
高山一実「必然な休戦」(島田欣征) オススメ!
おにい役のキャスティング(清水泰地さん)でほぼ勝利的なところもあるけれど、高山一実さんの持ち味も出ていて、微笑ましく観られる。島田欣征さんの作品は、17thの「憂えぬ蚤の市」も結構好きだった。
若月佑美「Carmine」(maxilla)
予告編を観た時はまた歌ものかと思ったけれど、本編は、「CDTV」を模した歌番組、という枠構造になっているところが、捻りが効いている。
Type-C
桜井玲香「ブルー、レイ。」(伊藤衆人)
シングル特典映像のメディアがDVDからブルーレイに変わったメタネタと、桜井玲香さんを掛けていて、うまいなあと思ったら、伊藤衆人監督。「レイはともかく桜井とブルーは関係なくない?」と思っていたら最後に……というところも気が利いている。
伊藤衆人
乃木坂46のミュージックビデオでは「白米様」、「ブランコ」、「意外BREAK」、「ライブ神」、「失恋お掃除人」、「トキトキメキメキ」、「空扉」。
個人PVでは、7th「研究生紹介」(2期生研究生)、10th「研究生×研究生」(2期生研究生)、10th「勇者ひなこのドラゴン修学旅行」(北野日奈子)、11th「せかい の おわり は、」(2期生研究生)、13th「ガチャ子さん」(松村沙友理)、14th「ガチャ子さん23」(松村沙友理)、17th「駄菓子屋れんたん!」(岩本蓮加)、20th「ヘルシーパラドックス」(向井葉月)。
西野七瀬「パワハラ部長 西野」(林希&賀内健太郎) オススメ!
「パワハラダメゼッタイ」でエクスキューズしてるけど、あのおとなしい西野さんの内に秘めた凶暴性が見たいという歪んた要求に見事に応えた作品です(ただし、本当にパワハラにトラウマがある人とかは観ない方がよいかも)。
あと、共演の濱津隆之さんがほぼ『カメラを止めるな!』の監督役まんまのキャラクターで、困り顔が最高に似合うし、実に旬なキャスティング。不意打ちの「よろしくでーす」(by 西野七瀬)は思わず噴いてしまった。
林希&賀内健太郎
乃木坂46の個人PVでは、17th「飛鳥マウス、街にあらわる」(齋藤飛鳥)。
まとめ
まず、今回からシングル特典映像のメディアがDVDからブルーレイに変わったんですけれども、やっぱりブルーレイ画質よいですね。この画質で乃木坂ちゃんが観られるので、諸手を挙げて賛成です。
また、今回は作品の平均レベルが高いなと思いました。映像作家たちがメンバーのキャラクターを把握した上で、もう一歩踏み込んだ演出をしているというか、逆に少しキャラクターから距離を置いた演出をしているというか。あとは、一時期、個人PVで歌ものが流行りまして、今回も歌ものは「マジっ子まいやん」、「ピクニック」、「タイムトラベラー」、梅澤美波「AMERICAN DIENER」(吉村一平 &山本篤彦)、「Carmine」、斉藤優里「白玉優里のこねラップ!」(吉川エリ)と複数あるんですが、どれもストレートな歌ものでなく、ドラマとか番組の中での歌、という位置づけで一捻りしている。
だからこそ今回は選抜メンバー分だけしか制作されていないというのが残念です。アンダーメンバーの個人PVがないと聞いた時は、「40人のメンバーとクリエイターをマッチングさせ、外仕事と都合つけながら撮影日を確保する、というスケジュール調整がもはや困難になってるんじゃないのかな。乃木坂46が大きくなり過ぎてしまい、初志が貫徹できないくらいに身動きが取れなくなってしまったんだな」などと醒めた感想を抱いたのですけれども、実際に出来上がったものを観ると、やっぱり乃木坂46の個人PVってよいカルチャーだし、アンダーメンバー分も観たかったな、と思いました。