ぶりだいこんブログ

推理小説とか乃木坂46の話をしています。

『search/サーチ』(アニーシュ・チャガンティ/2018)

 失踪した娘の行方を探す父親。そのすべての模様をPC画面で描き切ったサスペンス映画。
 監督は本作で長編デビューとなるアニーシュ・チャガンティ。出演はジョン・チョー、ミシェル・ラー、デブラ・メッシングら。

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 ※ネタバレしてます。

  まず始めにWindows XPのあの草原のデスクトップが表示されてるわけですね。え、今日日、XP? と誰もが思うところで、スタートメニューから奥さんのユーザーを作り、娘の幼稚園入園のフォルダを作成、写真を格納する。それから、娘のユーザーも作り、小学校入学やピアノ教室の動画が格納されていく。なるほど、XPなのは幼かった娘の成長を表現していたんだね!
 まるでAppleのCMのように軽やかなピアノのメロディと共に娘の成長がPC上で表現されていく。しかし、そこに暗雲が。あるメールを開くと、奥さんの血小板が減少しているというフレーズ。そこで夫婦はからだを鍛えるためにランニングを始める、という動画が流れる。奥さんは快方へ向かう。が、再び病気が再発。次の動画ではとうとうランニング中に倒れてしまう奥さんの姿が。
 娘のカレンダーに「お母さんの退院の日」という予定が追加される。その予定はドラッグで後ろ倒しされ、もう一度後ろ倒しされ、最後に娘はその予定を削除してしまう……

 この辺りまでがだいたい5分くらいだろうか、導入部となっている。面白いけれど、ネガティブに言えば、それこそAppleのCMでありそうというか、センスのあるCMディレクターとかでもやりそうなネタではある。

 さて、ここからが本編なのだけれども、まずね、お父さんの使っているPCがMacになっている。Windows派じゃなかったのかよ!(ちなみに、本作はソニーピクチャーズグループによる制作なのだけれども、昔、ソニーで制作した映画の登場するPCはすべてVAIOというのがあった。なんだったっけ……現在では、VAIO事業を切り離したからか、こだわりなくMacが登場している)
 Macなので、娘さんとはFaceTimeでTV電話をする。あと、さすがに主人公であるところのお父さんの表情や仕草を見せないで話を進行するのは無理と思ったのか、お父さんはTV電話をしていない時でも常時ウェブカメラをオンにしており、彼の挙動はすべてPC上に映し出される形になっている。でも、常時ウェブカメラオンって……
 娘の失踪も、夜中のPC上のFaceTimeの着信(お父さんは寝ているので取られない)で演出される。お父さんはやがて警察を呼ぶのだけれども、警察の捜査をPC画面上だけでいったいどうやって表現するんだろうと思っていると、「刑事のITリテラシーが高く、常にFaceTimeで捜査状況を報告してくれる」、「Youtubeでニュース映像を見ている体で屋外での捜査状況が分かる」といった手を使っている。
 最もポイントになるのは、「自分も捜索を手伝いたい」というお父さんに対し、刑事が「あなたは娘さんの交友関係を調べて」と返すところ。現代の交友関係=SNSなので、お父さんを部屋から一歩も出すことなく(お父さんがPCの前から離れてしまうと、作品のコンセプトが成立しなくなってしまうので)、娘のMacBookを開き、FacebookInstagramTwitterと交友関係を洗い出していく。すると、今まで知らなかった娘の生活があぶり出されていくのだった……恐らくこのくだりが本作の原初の部分ではなかったかと想像する。ちなみに、娘のTumblrを調べようとして、お父さんが分かんなくて検索ボックスに"tumbler"と入力してしまうの、芸が細かい。

 総じて、失踪した娘の知らなかった裏の顔、プロットのほどよいツイストと、お話自体はクラシカルな感じなのですが、あの手この手で、最初から最後までPC画面上でプロローグからエピローグまでを描き切った力業にはただただ感嘆です。フリー素材モデルから真相に気づくところも、あるあるからのどんでん返しって感じで、実によかった。