ぶりだいこんブログ

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『マガディーラ 勇者転生』(S・S・ラージャマウリ/2009)

 2017年に日本でも公開されカルト的なヒットとなった『バーフバリ』2部作で知られる、インド・テルグ語映画の監督S・S・ラージャマウリによる2009年の作品。
 400年前に悲恋を迎えた姫と剣士が現代に転生し、再び出会い恋に落ちる。一方、400年前も二人の仲を引き裂いた卑劣漢もまた現代に転生し、再び二人の仲を引き裂こうとする……
 出演はラーム・チャラン、カージャル・アグルワール、デーウ・ギル、スリハリら。

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 ※ネタバレしています。

 冒頭、剣戟と共に一人……三人……三十二人……という人数を数えるセリフだけが流れ、なんだろうと思わせる。こういう、見所を先取りして披露するのがラージャマウリ監督はうまい。
 次に、17世紀の剣士と姫が崖から転落死する場面が描かれる。これも、なぜ二人は愛し合っているように見えるのに結婚しなかったのか、そして、なぜ死に至ることになったのか、というのが謎めいて描かれる。
 続いてようやく舞台が現代インドに移り、主人公ハルシャがバイクに跨り颯爽とジャンプして、ばーん! と決めのポーズと名前のテロップ! ダサかっこいい!
 障害バイクレースに参加し、主催者の意地悪でいきなりバーの高さを上げられるも、バイクから手を離し、バイクと自分の間にバーを通すことで障害をクリアするというありえない技を見せ、レース場の見物客と、そして映画館の観客を魅了する。これも、冒頭エピソードで主人公をピンチに追い込み、斬新なアクションで切り抜けさせ、一気に主人公を主人公たらしめる、というラージャマウリ監督のお家芸の一つだ。
 レースの賭け金を盗んだ女を港まで追いかけてきたハルシャたち。ここで突然、ダンスミュージカルが始まり、ハルシャ演じるラーム・チャランがキレのあるダンスを見せる。ちなみに、エンドロールでは、キャスト陣とスタッフたちが入り混じってテーマソングに合わせダンスするオフショットが描かれる。垢抜けない踊りのスタッフに比べると、キャスト陣のダンス基礎スキルの高さは歴然としている。インド映画界ではやはりダンスを踊れないと役者になれなかったりするのだろうか……
 それから、ハルシャとヒロイン・インドゥが出会うんだけど、このベッタベタなスクリューボールコメディ的展開ね……お笑い要素も相まって、非常にくどいというかなんというか、このパートだけでも十分おなかいっぱいになれます。
 さて、悪役のラグヴィールが登場するんですけれども、自分たちを訴えてきた弁護士をいきなり投げ槍で射殺するくだりで、ザ・悪役というか、相変わらず「悪人にもいいところがある」的要素ゼロの作風に感服いたします。っていうか、告訴してきた弁護士は殺してしまえばいい、ってこれ現代インドが舞台なんですよね……?
 ってまだ序盤も序盤なんですけどこの調子で味わい深い場面を取り上げていく終わらなくなってしまう……いやね、他にも分かりやすく鳥が飛び立つ場面とか、ラグヴィールが街中でも槍投げをし始め、しかもそれが最終的にハルシャのかっこいい騎乗シーンにつながるわけの分かんない展開とか、ラグヴィールがインドゥのストールをすはすはする場面とか、え、敵が迫ってるのに武術大会するの? とかほんといろいろ取り上げたい場面がある。
 全般的に、『バーフバリ』と比べると、やはり予算の違いによるビジュアル面のチープさはあるし、脚本もざっくりした展開が多く若干納得感を得づらくなっている。しかしながら、上述の通りラージャマウリ監督の基本的なテクニックは十分に収められているし、クライマックスの100人斬りの場面は、舞台を崖の上の一本道に演出したことで横スクロール風の今っぽい迫力シーンに仕立て上げられている。その他、『バーフバリ』では削ぎ落されたインドローカル風味の演出も、かえってスパイシーでよい味を出しているともいえる。
 我々が既に『バーフバリ』という完成形が知っているからこそ、より楽しみどころを理解しやすい映画、であるかもしれない。

Magadheera (Original Motion Picture Soundtrack)

Magadheera (Original Motion Picture Soundtrack)