ぶりだいこんブログ

推理小説とか乃木坂46の話をしています。

『詩季織々』(李豪凌、竹内良貴、易小星/2018)

君の名は。』の新海誠が所属するコミックス・ウェーブ・フィルムと、中国のアニメ制作スタジオ絵梦がコラボしたオムニバスアニメ映画。中国の都会に暮らす若者の悩みと成長を美しい風景と共に描く。
 監督は、中国で『万万没想到』等の実写映画を手掛けた易小星、『君の名は。』で3DCGチーフを担当した竹内良貴、絵梦の代表である李豪凌の3名。声の出演は坂泰斗、寿美菜子、大塚剛央ら。中国語での作品名は『肆式青春』。

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ネタバレしてます。

 湖南省の田舎や、北京の雑踏、上海の高層ビル群や古い路地裏が、新海誠風に美しく描かれ、その点で非常にフレッシュな映像だと感じた。勝手な想像だけど、中国の若い人もこういうセンチメントなのだろうな、と思った。
 以下、個々の作品について雑多に。

「陽だまりの朝食」(易小星)

 湖南省の田舎の出身のシャオミンは、幼い頃に祖母と食べた三鮮米粉を懐かしく思い出す。田舎町の埃っぽいような風景が実に美しく描かれている。ビーフンの麺が結構太い。北京のファーストフード店でシャオミンがビーフンを頼む場面で、店員の愛想がいいのが気になる。演技指導が日本寄りになってしまっているのでは……

「小さなファッションショー」(竹内良貴)

 広州を舞台に、ファッションモデルを務める姉イリンと、デザイナーを目指す妹ルルの、衝突と和解を描く。一つ気になったのは、最近まで一人っ子政策のあった中国で、姉妹という存在がそもそもあるのだろうか? 少数民族や一人目が女性の場合は二人目以降が許容されたりするようだし、いろいろ背景があるのかもしれないが……

「上海恋」(李豪凌)

  上海の古い街並み「石庫門」を舞台とし、カセットテープをキーアイテムに、幼馴染だったリモとシャオユのすれ違う恋を描く。一般的にオムニバスは最終話が最もよく出来ているというものだが、確かに本作が最もお話としての推進力があるものになっている。しかし(というか、むしろ、だからこそ?)、主人公のリモくんは独りよがりな思い込みによって両思いをご破算にしてしまうクソ・オブ・クソ・オブ・クソ野郎で、「すごい、新海誠作品の主人公像がちゃんと東アジアに影響を与えてる……偉大……」という思いでいっぱいになります。そんなところは真似しなくていいと思うし、でも、一回真似してみたかったんだろうなとも思う。

詩季織々 [DVD]

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