ぶりだいこんブログ

推理小説とか乃木坂46の話をしています。

『あいのり: Asian Journey』(フジテレビジョン/2017~2018)

めちゃ×2イケてるッ!』、『とんねるずのみなさんのおかげでした』が終了し、フジテレビの凋落が伝えられているけれども*1、改めてフジテレビのバラエティ番組はすごいなと思った。
 なにがすごいのか?
『あいのり: Asian Journey』である。
『あいのり: Asian Journey』は、1999~2009年までフジテレビ系列で放映されたTV番組『あいのり』の続編である。正続共に、「ラブワゴン」と呼ばれるピンク色に塗られたワゴン車に一般公募で集められた若い男女が乗り込み、世界を旅しながら彼らが恋愛するさまを描くリアリティ番組となっている。
 話が変わるようだけれども、「乃木坂46新内眞衣オールナイトニッポン0」で、2018/4/18に「妄想あいのり名場面特集」というのが放送された。新内眞衣と、おなじく乃木坂46和田まあやが、かつて『あいのり』に出演していたという体で妄想の思い出話を語るという企画で、これが結構面白かった。「あいのり」のエッセンスがなかなかうまく抽出されていた。
 これがきっかけで、Netflixで配信されている『あいのり: Asian Journey』を観てみることにした。
 これがめちゃくちゃ面白い。
 一見、若い男女が旅先で能天気に恋愛をしているだけのようだが、番組の作りとしては非常に緻密で、面白さのパーツを丁寧に積み重ねているような印象だ(もちろん、若くて健康的な男女が、ヘテロセクシャルな恋愛にかまけるという内容は、鼻持ちならないといえば大変鼻持ちならない。そういう点が嫌だという人はいるだろうなと思う)。
 まず、ラブワゴンのメンバーがいい。一癖ありつつも好感がもてるという絶妙な奴らばかりだ。
 描き方として印象的なのは、メンバーの欠点を隠さずにむしろフォーカスしているところだ。例えば、「有給公務員たか」はスマホで得た雑学をとくとくと女性メンバーに語ってしまうのが欠点なのだが、これを始めからコミカルに描くことで、味わいのある人間像として迫ってくる。

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Netflix『あいのり: Asian Journey』エピソード1「新たな旅の始まり」より

 そういった場面を受けて、スタジオでオードリー、ベッキーらがコメントする(視聴者の突っ込みを代弁する)という「枠構造」がやはり今風だ。特に「洞察に長けた女性陣」と「ぼんくらな男性陣」の対比がうまくて、「ほんっと男子は女の子の気持ちが分かってないんだから~」っていうアレをテレビで堪能できる。男女心理に精通しスタジオに君臨するかのようなベッキー自身が脛に傷をもっているというのも、既に指摘されている通り*2、いい塩梅になっている。これも人選の妙だ。

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Netflix『あいのり: Asian Journey』エピソード1「新たな旅の始まり」より

 ナレーションの際に必ず「有給公務員たか」、「元ミス松阪ゆめちん」など「肩書+ニックネーム」で呼称するのもポイントだ。恐らく元々は無名の素人に対するキャラクター付けだったのだと思われるが、もはや様式美である(若干ナメた感じの肩書もミソである)。前述の「乃木坂46新内眞衣オールナイトニッポン0」の「妄想あいのり名場面特集」でも、「漁師の卵さかなクン」、「エリート大学生ようへい」等の妄想キャラクターが登場するのだけれども、「(若干ナメた感じの)肩書+ニックネーム」で呼称するとそれだけで「あいのり」っぽくなる、魔法のスパイスなのである。
「愛のないSEX あり or なし」みたいな、まるで役に立たない、しかし、確実に盛り上がる議論も面白さに一役を買う。

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Netflix『あいのり: Asian Journey』エピソード2「だから男と女はすれ違う」より

 合間に関係ない食堂のおばさんをインサートするギャグ演出もさすがだ。
 また、番組の端々で、出演者の綴る日記が読み上げられる。これがちょうど少女マンガのモノローグのような効果になっている。もう少し説明的なことを書くと、ロケ映像で映し出されるのはあくまでラブワゴンメンバーの「行動」と「会話」(つまり、アクション)なのだが、その裏側の心理を日記が描写するという、ドキュメンタリーに厚みをもたせる演出になっているのだ。

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Netflix『あいのり: Asian Journey』エピソード3「泥に咲く花」より

 その他、ミャンマーの小学校で日本語を教える、みたいなちょっといい感じの場面も本筋と関係ないと見るやばっさりカットしてオープニングでオフショット的にさらっと流す手つきも実に鮮やかだ。
 総じて、ラブワゴン、スタジオ共にまずベストを尽くしただろうなというメンバーを集めたうえで、彼らをちょっと小馬鹿にしながらも的確な演出でエピソードを積み上げていき、アジアの美しい風景もさらっと織り交ぜ、エモーショナルな部分はきっちり描くという、本当に呆れるほどバランスの取れた距離感だ。フジテレビバラエティ制作の底力を思い知らされる番組である。
 本当は、女性メンバー「自称・中の下でっぱりん」がブチ切れた「人生の一部始終をカメラに撮られることの是非」についても、いろいろ書きたいのだが、長くなってしまったので、それはまた別の機会に。

 

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