ぶりだいこんブログ

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『秘密 -トップ・シークレット-』(清水玲子)自分用全話解説

 清水玲子の『秘密 -トップ・シークレット-』は、各話のサブタイトルが「秘密 トップ・シークレット 2002」みたいに年号でしか表記されず、しかもその年号は作中の時系列でなく雑誌掲載年のため、めちゃくちゃ分かりづらい。いつも何巻にどの話が収録されているのか分からなくなってしまうので、自分があとで見返す用に全12巻のエピソードを整理することにした。
 ※ネタバレしてます。

総評

 SFミステリとしてオリジナリティが高い。いわゆる「本格ミステリ」方面でないところからこのようなアイデアが生まれたのは結構驚きである。
 遺体の脳の映像記憶が再生できる(しかも音声は再生できない)、という設定がマンガというメディアにとても適している。非常に視覚的なテーマで、また各話の適度なボリュームやよく練られたプロットから、連続ドラマ化の誘惑にも駆られるだろう(猟奇的なテイストといい、いかにもNetflixが連続ドラマ化しそうな作品だ)。
 一方で、少女マンガ的要素が猟奇ミステリと両立しているのも特徴的だ。警察組織が中心であるにも関わらず、登場人物は非現実的なまでに美形で(もちろん、それがいい)、また、特に後半が顕著だけれども、正義のために傷つきながらも孤高を目指そうとする薪警視正と、純粋にそれを慕う青木警部の、半ば恋愛のような関係が描かれ、最終的にお互いを「居場所」として認め合う結末も、安心感がある。

1巻

 

 

秘密 トップ・シークレット 1999(第1話)

 アメリカ大統領殺人事件。周知の通り、本作のみ登場人物が第九メンバーでなく、MRI捜査確立前のアメリカを舞台としている。読み切りパイロット版のような位置づけだったのだろう。MRI捜査が暴き立てる大統領の秘密と、読唇術のプロである主人公の、実の母親に対する秘めた思いの対比、それから大統領の秘密をセリフやモノローグなしに絵とコマ割りだけで描く鮮やかな表現力が卓越しており、実はシリーズで最も完成度が高いエピソードかもしれない。恐らく著者もこれで手応えを感じてシリーズ化を決意したのだろうし、自分もこのエピソードが面白くて続きを読み進めていったように思う。また、シリーズのメインである第九のエピソード群は猟奇ミステリの味付けが強く、それはそれで大好物なのだが、この大統領のエピソードのようなヒューマンドラマに寄せたシリーズ展開も、取り得る選択肢の一つだったんだな、とも思った。

秘密 トップ・シークレット 2001(第2話)

 少年連続自殺事件。シリーズを通して影を落とす「貝沼事件」も描かれる。貝沼のトリック(催眠術)を見抜いた第九が新たな犠牲を未然に防ぐために、ヘリコプターを飛ばす。


2巻

 
秘密 トップ・シークレット 2002(第3話)

 第九新人の天地奈々子が脳だけ抜き取られて殺される。犯人は整形外科医。自分が共犯として関わっていた「渋谷連続少女殺人事件」を隠蔽するために事件を起こした、らしい。


秘密 トップ・シークレット 2003(第4話)

 冤罪死刑もの。一家惨殺事件の犯人が死刑執行されたあとに、事件の生き残りであり、真犯人である娘が姿を現す。娘の大量殺人の証拠を目撃した少年も殺害され、その脳をMRI調査しようとするも、その少年は盲目。万事休すかと思いきや、飼い犬の脳をスキャンするという展開が効いている。父親に襲われそうになったトラウマが原因。


3巻


秘密 トップ・シークレット 2005(第5話)

 着ぐるみによる復讐殺人。登場人物たちが過去のある行いによって次々と殺害されていく、というのはなんとなく海外サスペンスっぽい。


4巻

 

 
秘密 トップ・シークレット 2007(第6話)

 電車内見殺し&バイオテロ。三好先生初登場。

秘密 トップ・シークレット 2007 特別編

 薪だけが真相を知っている、石丸大臣偽装自殺事件が断片的に描かれる。

5巻

 

 

秘密 トップ・シークレット 2008(第7話)

 沼から死体が出てくる。児童虐待のフラッシュバックと、時効を迎えた誘拐殺人の2エピソードが、事実上合体したスタイルとなっている。


秘密 トップ・シークレット 特別編

 岡部がぎくしゃくした親子を助ける短編。

 

6巻

 

 

秘密 トップ・シークレット 2008 A PIECE OF ILLUSION(第8話)

 介護に疲れた中年女性が殺人する話。過去回であり、岡部が第九へ異動するエピソードにもなっている。

 

秘密 トップ・シークレット 2008 特別編 COPY CAT

 秋田の一家惨殺事件は、イギリスのテレビドラマの模倣だった……初読の際、話が途中でぶつっと切れて終わるので、困惑した覚えがある。全話読むと、最終話に向けての伏線だったことが分かるけれど。

 

7巻

 

 

秘密 トップ・シークレット 2009(第9話)

 外務大臣の娘が誘拐される話。インターナショナルで、派手な舞台立てに、どんでん返しを畳みかけており、最もエンターテインメント寄りだと思う。ただ、薪の説教くささというか、犯人の代弁者ぶりもピークとなっており、好みが分かれるかもしれない。

 

8巻

 

 

秘密 トップ・シークレット 2009 特別編 一期一会 A once-in-a-lifetime chance

 非事件回。第九の分室設立が計画される。この話読むといつも、薪さんと職場が別々になると知って涙をぽろぽろこぼす青木に噴き出してしまう(半分ギャグだと思う)。

 

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『秘密 -トップ・シークレット-』8巻 48~49ページ
秘密 トップ・シークレット 2010(第11話)

 地震の話。失認状態の脳からどうやって犯人を特定するかというエピソードと、大地震のトラウマ、という2つのエピソードが合体した構成となっている。先生の花柄のシャツとか、遺体の写真の対比とか、視覚的な伏線が効果を発揮している。

9巻~12巻

 

 

 

 

 

 

 

 

秘密 トップ・シークレット 2010 The Last Supper プロローグ

 第九のデータへのハッキングと、薪の車に爆弾が仕掛けられる話。ハッキング犯として、貝沼事件で精神病棟へ幽閉された滝沢の存在を薪は疑う。また、冒頭から最後まで、家屋内での惨殺のイメージが描かれる。

秘密 トップ・シークレット 2010 The Last Supper

 薪だけがMRI捜査をしたという「カニバリズム事件」、青木と三好先生の食事会、滝沢の第九復帰、青木姉夫婦の惨殺事件が描かれる。関係ないけど、食事会は恵比寿のガストロノミー ジョエル・ロブションと思しきレストランで行われている。2060年にもロブションはあるのだろうか*1

秘密 トップ・シークレット 2010 END GAME(第12話)

 最終話の長編もの。ポリティカルフィクションテイスト。青木姉夫婦殺害は、カニバリズム事件を目撃していた薪への警告だった。犯人は中央アジア・チメンザールの政府組織。民主化運動のリーダー、ヒラル・アイ殺害を隠蔽するためのものだった。ヒラル・アイ殺害の唯一の生き残り、ハシムは日本へ亡命後、ヒラル・アイ殺害を公にするため、敢えて「カニバリズム事件」を起こし、自分の脳を薪に見せていた*2
 ちなみに、薪と滝沢の屋内での格闘と、強襲部隊の突入をカットバックで描き、でも、強襲部隊は薪に騙されて全然別のところへ突入してました、って演出は『羊たちの沈黙』からの引用でしょうか。

秘密 トップ・シークレット エピローグ・一期一会

 第九の九州管区室長になった青木が、渡米した薪へ会いに行く話。繰り返しになるけれど、猟奇ミステリシリーズなのに最後は主人公の「居場所」の話になるのが、日本の少女マンガらしくて、好きなところだ。

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『秘密 -トップ・シークレット-』12巻 166~167ページ



*1:MRI捜査を成り立たせるためだけの未来設定なので、事実上は2000年代の話ですよ!

*2:ハシムが死んだという描写がないので、なぜMRI捜査をする至ったのかが腑に落ちないけれど。