ぶりだいこんブログ

推理小説とか乃木坂46の話をしています。

『アウトレイジ 最終章』(北野武/2017)

アウトレイジ』(2010)、『アウトレイジ ビヨンド』(2012)に続く、ヤクザの破滅的な抗争をドライなタッチで描くシリーズ第3弾。監督、脚本、主演を務めるのはシリーズ共通で北野武ビートたけし。他、西田敏行塩見三省大杉漣大森南朋ピエール瀧らが共演。

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 本作で最も魅力的なキャラクターは西田敏行演じる花菱会若頭西野だ。たけしを操り、死んだ振りをし、大杉漣の策謀を軽やかにかわす。冗談を言ったかといえば、凄みのある恫喝をし、張会長にあしらわれた時は拗ねたような素振りもする。ナミヤ雑貨店の店主と同一人物とは思えない(笑)。
 北野武本人も次のように話している。

 

――物語を作っていく段階で既に主演がご自分だっていうことは分かっているわけですが、そういう時、アテ書きみたいな部分はありますか。ご自分が大友を演じるという前提で脚本作っていったというか。

 

北野 台本書く時ね、一応俺の名前出てくるんだけど、今回の主演は西田さんだったり塩見さんだから。俺、自分が主演だと全く思ってないし。他の人のやり方、「あの人はこういう風にやるんだろうな」とか、そればかり考えてる。知ってる役者ばっかりだからだいたい想像つくし。

 

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 西田はテレビドラマの「白い巨塔」(2003)で、唐沢寿明のこれまた関西人な父親役を演じていて、この役も結構好きだった。
 ピエール瀧もよくて、ドMの組長という美味しい役柄を好演している。『凶悪』(白石和彌/2013年)でもヤクザ役をやっていたが、あっちは本当にキレたらなにするか分かんない雰囲気を醸し出していて、怖かった。本作のピエール瀧は強面であるが、愛嬌もあって、味がある。散り方も本作では最も華があるだろう(笑)。
 前作『アウトレイジ ビヨンド』でひとまずお話としては完結していたように思っていたので、どのような話になるのかと思っていたけれど、やはり「終わったところ始めた話」という感じで、それは劇中で大杉漣西田敏行が、権力闘争のために、争いのないところに無理やり争いを引き起こすよう仕向けていることと相似しているとも言える。
 作中のたけしは、前作で大友組の部下たちの敵を討ち、もはや戦う理由はないはずだ。しかし、ピエール瀧の引き起こしたちょっとしたトラブルが、やがて花菱会全体を左右する大きな殺し合いに発展していってしまう。
 1作目『アウトレイジ』は、これも暴力団上層部の策謀によって無意味ともいえる暴力の嵐に身を投じることになった大友組と、しかし、大友組の面々がそれを喜々として遂行するというギャップが面白く、また、たけしはその中で完全に真空というか、権力者たちに挟まれて自分の意志などないように暴力を遂行していくさまが、独特で面白かった。
 2作目ではもう少しウェットになり、中野英雄演じる木村に義理人情を感じ、再び殺戮の嵐に身を投じることとなる。
 本作ではさらにウェットで、韓国済州島で引退生活を送っていたところ、ピエール瀧の組員に部下を殺されたことで、自ら日本へ帰国し復讐に買って出るようなことをしているが、自分は1作目が一番好きなので、そのウェットさが少し物足りないなあと感じた。